Taichi

デヴィッド・リンチ:アートライフのTaichiのレビュー・感想・評価

4.3
社会性や倫理性とは全く無関係なひたすらに自己の悦びだけを目的としたナルシスティックなイマジネーションの世界。こうした世界を自己の内側に少しずつでも築き上げていく。社会のイデオロギーは無遠慮に個人を意味づけ価値づけていくが、そうした暴力的な抑圧に対し、真正面からぶつかりあっていくだけではなく殻に閉じこもるという選択もまた一つの大きな反抗なのだろう。完全変態する昆虫たちがそうであるように、脆弱な幼虫は天敵を避け葉影や地中で生活をしながらも、蛹となって一度自らのうちに立て篭もり自己を解体することで、やがて成虫として強固な鱗や鮮やかな羽根を手に入れ新たな生命へと羽ばたいていく。こうした尽きることのない解体と変容こそが芸術であり、芸術とは結果ではなくその過程のことなのかもしれない。
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