2023年225本目
Netflixのドキュメンタリーは勉強になるものが多いが、これもアメリカの社会問題について関心があるなら見ておくべき一作。「犯罪者＝悪い奴」、だから辛い目に遭っても当然だ、という固定観念が崩される。黒人や有色人種に対する差別というと、ニクソンやレーガン、そしてお馴染みドナルド・トランプの顔が思い浮かびがちだが、それらの人々だけでなく、実は「リベラル」に人気の民主党のクリントンが黒人迫害に重要視な役割を果たしていた、という史実は見逃せない。
また、資本主義が行き着く先の「今だけ、金だけ、自分だけ」という新自由主義が、すでに刑務所すら金儲けのビジネスと化していた、ということには恐れ入った。「刑務所に入るような奴は悪い奴に決まっている」という考えは全く通用せず、それどころかビジネスのために「犯罪者」が量産され、その結果がアメリカの異様な収監者数の増加につながっている。なんとも恐ろしい話だが、日本にとってもさほど他人事とも思えない。通俗道徳と資本主義の邪悪な結び付きは、人間を食い物にする恐ろしい怪物なのだということを改めて教えてくれる秀逸なドキュメンタリーであった。
