MasaichiYaguchi

オリーブの樹は呼んでいるのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

オリーブの樹は呼んでいる(2016年製作の映画)
3.8
スペインの諺で“Cade mochuelo a su olivo”というのがある。
この諺を訳すと、「猛禽類は1日が終わると木に帰ってくる」となり、つまり、仕事等のやらなければならない事をを終え、「さあ、オリーブの樹(=家)に帰ろう!」を表している。
このことから分かるように、スペイン人にとってオリーブの樹は身近で、無くてはならない存在なのだと思う。
本作には樹齢2000年のオリーブの樹が登場し、この樹を巡ってある家族のドラマが展開していく。
この作品のヒロイン、アルマにとって、大好きな祖父が大切にしてきたオリーブの樹には楽しい思い出でがあり、2人にとって絆のようなシンボルツリーと呼べるもの。
そんな大切な樹を、オリーブ農園の経営難から父親が売却してしまったことから一家に波風が立つことになる。
アルマは心の支えを失って急に老け込んだ祖父を元気付けようと、出たとこ勝負でドイツのデュッセルドルフにある祖父のオリーブの樹を奪還しようとするのだが、彼女が住んでいるスペインのバレンシアから目的地までの遠さ以上に、そこには様々な困難が待ち受けている。
このデュセルドルフの“所有者”は大金でオリーブの樹を“シンボルツリー”として購入しているので簡単に手放さないのを分かっていながら、アルマはドン・キホーテよろしく、サンチョ・パンサ役の変わり者の叔父と同僚のラファを従者に無謀にも挑んでいく。
ある意味、ロードムービーでもある本作は目的地でどのような結末を迎えるのか?
シンボルツリーは家族で代々受け継がれていくものだが、祖父のシンボルツリーを通しての思い、それが孫娘が執った無謀な行動によって家族を中心に大きな波紋として伝わっていくのが心の琴線に触れます。
桜や銀杏以外、都会の樹木に関心の無い私だが、東京にもオリーブの樹が植えられているとのことなので、見付けたらその樹に触れてみたいと思う。