きぬきぬ

ザ・モンスターのきぬきぬのレビュー・感想・評価

ザ・モンスター(2016年製作の映画)
3.2
タイトルどおり、鋭い牙を持つモンスターが出て来る。でもここでのモンスターは、アルコール中毒でどうしようもない若い母親と、そんな母親を憎悪しながらも母として愛している娘の関係、彼女たち母娘の愛情際立たせる手段に過ぎない。
それでも充分に暴力的なモンスターではあるけど。

アルコール中毒から立ち直れず、幼い娘を苦しめ続け、どうしようもなくなった母親は娘を父親に預けることを決断する。娘の幸せの為にはその方が良い、と思える。でもそんな厄介過ぎる母親とずっと生きて来た娘の気持ちは?
母親なりの娘への愛情、娘の母親への愛情の、お互いの繊細さな部分もあるし、それぞれの想いが、モンスター出現の緊迫感とリアルある襲撃の中で描かれる。そう、これってモンスター映画ではないのだ。モンスターの存在は生死にかかわるけど狂言回し的で、どれほどしょうがない母親であっても、どれほどそんな母親を嫌う娘であっても、母と娘の愛情の絆は強く、その想いが作品の要となってくる。そして娘が母親から巣立つ、過酷な通過儀礼。

大人に成りきれなかったけど母親でいたいと思ったゾーイ・カザンも、その娘で母親を憎みながら愛しているエラ・バレンティンもとても良い。
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