前歯カケル

光の前歯カケルのレビュー・感想・評価

(2016年製作の映画)
3.2
大森立嗣監督 光

東京の離島で育った信之(井浦新)美花(長谷川京子)輔(瑛太)の壮絶な幼少期から物語が始まります。

灯台守から避妊具を買う信之、信之を兄のように慕いどこにいくにもくっついて離れない輔

ある日美花が神社の境内で男に犯されている現場に遭遇します。助けを求める美花を目にし、激昂した信之は男を撲殺
輔は宝物のように持ち歩いてるカメラで撲殺された男の写真を撮ります。

ほどなくして離島が大津波に襲われたことにより多くの命と共に男の死体も流され、島を離れた3人と忌まわしい秘密も忘れ去られていくかと思われました。

時がたち大人になった3人ですがそれぞれの道を進み、会うこともありませんでした。
信之は妻の南海子(橋本マナミ)と幼い娘の家庭を持つ公務員
美花は名前も変え過去を公表しないミステリアスで美しい女優に。

突如として、輔が姿を表し信之と美花を過去に起こした事件の写真をネタに脅迫してきます。
写真と引き換えにお金を工面すると持ちかける信之ですが…


※以下、ネタバレを含みます。

公務員となり、南海子と幼稚園の娘と平穏に暮らしているように思える信之ですが、南海子は不倫しており、娘は不審者から性的暴行の被害に遭います。
中盤あたりで、それまで冷静で大人な対応をしていた信之が、声を荒げ家具を倒し南海子を罵倒するシーンがあります。
このシーンは結局、溢れそうだった感情をグッと堪えた信之の頭の中を描いたものですが、殺人を犯してしまった時からおそらく意識的に自我を抑制するようになったのでしょう。

一方、実は幼少期に虐待を受けていた輔は大人になっても父親の呪縛から逃れられません。
幼少期も、大人になって再会してからも、慕っている信之が唯一の心の支えなのです。
信之と過ごす時間では、無邪気な笑顔を見せる輔ですが最後、信之の手によって殺されるも、輔はどこか清々しそうです。

不安の種は全て取り除き、美花を強く求め続ける様になった信之ですが、島での事件以降心が死んでしまった美花も、最初は信之を頼り信之の気持ちにも応えていましたが、次第に拒絶し始めます。

美花の本心が見えるような描写が映画では殆ど出ないため映画では、美花は気のあるそぶりを見せ、目的のために信之を操っていたとも見えます。

輔を殺し、美花にも拒絶され、
信之に残されていたのは、全てを知った妻、父を望む娘ーーー

ここで映画は終わります。


それぞれの歪んだ愛情と人間の業を生々しく表現されており、劇中で度々流れるテクノミュージックの独特なノイズのような音楽がよりいっそ気持ちを重くさせます。
体力と精神を根こそぎ持っていかれるためどっと疲れます。
『いや、光どこやねん』と。

すがるものがあることでギリギリ正気を保っているまるで諸刃の剣です。

暴力的で、強烈なインパクトを残す映画ですが好きな人はとことん好きだろうな、と思います。

オマケ
橋本マナミと瑛太のベッドシーンが生々しくてどエロいのですが、非常に残念なお知らせです…。
マナミのおっぱいは出ません!
前歯カケル

前歯カケル