マーフィー怒りの鑑賞

I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザーのマーフィー怒りの鑑賞のネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

テレビ神奈川(tvk)で放送していたので録画鑑賞。

自分はSWライトファン層という感じで、SWオタクではないが10代の頃に1997年の旧3部作特別篇と、1999年からの新3部作の計6作を劇場で鑑賞したので、それなりに思い入れはある。

そんなライトファン層の自分にとっても興味深く、退屈せずに最後まで楽しめる作品だった。この手のドキュメンタリーでマニアでない層に、飽きさせずに鑑賞させるのは中々凄いと思う。

デイヴィッド・プラウズが2020年に新型コロナで亡くなった際に訃報に触れ、その時に「時計仕掛けのオレンジ」に出演していた事も知った記憶があるが、今作を鑑賞するまですっかり忘れていた。

まずプラウズが身長198センチの長身で、英国ウェイトリフティングのチャンピオンかつナチュラル・ボディビルダー(フィジーカー)だった事に驚く。ダースベイダーが大柄な事は映画を見ればわかる事だが、長身なだけでなくムキムキだったとは。スーツ着てると分からんね。彼がボディビルダーをやっていた頃は12歳年下のシュワちゃんの頃と違い、ステロイド剤が普及していなかったのかもしれないが、彼がフランケンシュタインやダースベイダーを演じることができたのは、ナチュラル・ボディビルダーだったからだと言えるだろう。

ステロイドを使ってもっと筋肉を付けていたらスーツアクターは務まらない。「ロボコップ」は当初シュワちゃんを起用する話があったそうだが、彼よりもずっと痩せているピーター・ウェラーが起用された。プロビルダー(ステ使用が常識)は筋肉そのものが服みたいなものなので、服やらアーマーを着用すると着ぶくれして様にならないから、ウェラーを起用して正解だった。

映画の前半ではプラウズの経歴が映像や写真で紹介される。面白いと思ったのは「Mighty Tonka」というTonka社(作業車のおもちゃ製造会社)のCM。1969年製作のこのCMの監督は、なんとあのリドリー・スコット(英国人)である。後に「ブレード・ランナー」で有名になるスコットが、後のダースベイダーを撮っていたとは面白い。

「時計仕掛けのオレンジ」で、主人公達にリンチされ下半身不随になった作家のヘルパーを演じたのもプラウズ。同作を初鑑賞した時から、マッチョすぎるヘルパーとして印象に残っていた。眼鏡姿にピチピチTシャツ&ホットパンツの無言マッチョ、主人公に負けず劣らずのヤバい雰囲気を醸し出している(笑)

今作の要となるトピックは以下の二つだと思う。

・「ジェダイの帰還」のクライマックスで、素顔のダースベイダー役を別俳優が演じたのはなぜか?

・ダースベイダーが死ぬ結末を、プラウズがタブロイドにリークしたという疑惑は本当か?

まず一つ目は「プラウズが情報をリークした疑惑+口が軽いと思われていた」せいで、ルーカスとしては情報漏えい防止のため、プラウズを最終シーン撮影に参加させたくなかったからではないか?と映画内では推察されていた。

たしかに情報漏えい防止のためという可能性はありそうである。しかしこれは副次的な理由であって、一番の理由はルーカスのイメージするアナキン・スカイウォーカーの顔と、デイヴィッド・プラウズの顔が異なったためだと思う。後の新三部作でアナキン役を務めるヘイデン・クリステンセンは美男子であるし、「ジェダイの帰還」で同役を演じたセバスチャン・ショウも端正な顔立ちである。一方のプラウズは、輪郭や鼻こそ整っていると言えるものの、相当な外斜視で目つきがよろしくない。悪役だからそれで良い感じもするが、善から悪に転落したアナキンには、もっと端正な顔立ちで純粋な雰囲気の役者が相応しかったのだろう。あとプラウズに相応の演技力があったかも怪しい。どちらにしろ声はジェームス・アール・ジョーンズが吹き替えるわけだし。

二つ目の疑惑は劇中で言われているように、プラウズは濡れ衣を着せられただけであり、リークは別の者からだったのだろう。報道元の「デイリーメール」の記者がそう証言しているわけだから。この濡れ衣のせいで、長年SWの公式イベントに参加できないまま逝去してしまったのは気の毒である。しかしファンには愛されていたようなので、それが救いか。

「『ジェダイの帰還』の最終シーンをもう一度撮りなおしましょう!」と今作の監督はプラウズに提案し、実際にスペインの映画製作スタッフを雇って実行し、上映会も開くのだが、権利の関係かその映像は今作内で披露されない(爆)

いやいや、それってこの映画で一番大事な部分じゃないのかい?監督がルーカスフィルムに電話したら「プラウズとダースベイダーのマスクが同時に映る事は認められない」と言われたらしいし、権利の関係上仕方ないのか。

まぁこの映画にとって再撮影は大事だけど、見てる側からすればプラウズの経歴やSW製作の裏側を色々知れて楽しい作品なので、大した問題ではないか。