つるばみ色の秋津凡夫

光のつるばみ色の秋津凡夫のレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
1.4
暗闇

印象的なカット、強調される環境音が光に照らされていた。
ただ、音声ガイド以外のシーンでも過剰なまでに表情の一部をクローズアップの長回しで撮り続けており、演出とはいえ行間を読み取らせる誘導がそれこそ押し付けがましく思えた。
また、視覚障害者の方が御自分の言葉で話されているシーンが印象的な分、小市氏以外の役者の台詞回しが浮いている。
それから、雅哉と美佐子の関係の変化が思春期の様に性急である事や前半の美佐子の常識の無い行動・言動から、成長材料を示す描写は多々あるが、それでも納得いなかった。
しかし結末は大変美しく、まさか上映中に目を瞑る事になるとは思わなかった。

映画制作に携わった人間ならば、受け手に伝わらなくとも自己責任として処理ができる。
また、観客ならば誤解や誤読をしたとしても、それは受け手の特権であり間違いでは無い。
しかし音声ガイドは、他者の作品を自らの言葉や文法を通して受け止められるのだから、「正解など無い」と逃げる事が許されない。
心の底から彼等を尊敬する。

さて、彼には一体どの様な光が見えたのだろうか。
少なくとも映画を愛する我々にとっては、暗闇の中スクリーンに映される全てが希望の光である。