土屋ノリオ

光の土屋ノリオのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
4.4
2007年『殯の森』でカンヌ国際映画祭のグランプリを受賞。本年は最高賞のパルムドールの獲得には至らなかったが、エキュメニカル審査員賞を受賞した、日本国内外で注目される河瀬直美監督の最新作。徐々に視力を失いつつあるカメラマンと、映画の音声ガイドを作成する仕事に就く女性とが、お互いの理解を深めていくオリジナル脚本の本作。前作の『あん』と同様に、木々のせせらぎ・虫や鳥の声などの色々な音が詰め込まれていく、期待以上の出来栄え。説明しすぎなく、クローズアップやバストカットを多用した映像も、見る側に考える時間を与えてくる。主演の二人も素晴らしい演技で特に永瀬正敏は今年の賞レースの本命になるのは間違いない。

「言葉で説明する難しさ」

を改めて、本作を観て知ることができ、

窓の外から差す「光」
電気の「光」
夕日が射したときの「光」

同じ「光」でも全く違うものを表現し、曖昧ではなく「光」の正解を求めながら繋がるラストシーンは圧巻。上映中に自分を目を瞑ってしまう程で、このような映画もあるのだと教えてくれた、丁寧に作られた素晴らしい作品。
土屋ノリオ

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