Runa

ユリゴコロのRunaのネタバレレビュー・内容・結末

ユリゴコロ(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通と違うのでしょうか」

CMでこのフレーズがとても気になり映画館で鑑賞しました。
結果、久しぶりにいい映画を観たなと思えるくらい素敵な映画でした。

初めは亮介の婚約者である千絵がいきなり失踪したり分からない部分が多いですがノートの回想が進むにつれ、過去と現代に起こっていることが少しずつ分かり繋がっていく流れがとても自然でよかったです。

美紗子の過去の殺人シーンはホラーやスプラッター、映画慣れしてる人じゃないとショッキングな映像でなかには観れない方もいるかもしれません。
特にはじめ3つの池での友人殺害、鉄蓋での殺害、みつ子とのアームカットのシーンはショッキングです。
でも、私は個人的にとても映像が綺麗で好きでした。
どこか現実味のない、ノートの回想シーンであることを思わせる映像美で美紗子の異常さが際立ってよかったです。

美紗子にとって1つ目のターニングポイントになるみつ子との出会い。
もし本当にみつ子が約束を守っていれば、きっと2人は本当に外国で仲良く暮らしていたと思います。
みつ子にとってのユリゴコロだったアームカットを我慢することで、きっと美紗子も人殺しではなく、みつ子が本当のユリゴコロになっていただろうなと思います。

そして洋介との出会い。
映像美に見入っていたのでまさか洋介が鉄蓋の殺害の大学生だったとは思っていませんでした。
このあたりから所々泣けてしまいました。

そして洋介が最終的に全部を知り、美紗子を殺そうとするも殺せない。
どこまでも優しい洋介の温かさがよく描かれていたと思います。

そして現代に戻り、細谷が美紗子だと分かり亮介が殺そうとするシーン。
亮介があの時美紗子を殺していたらきっと美紗子のようなユリゴコロのない人間に変貌していったと思います。
だけど、父と同じように自分の人生を狂わせた女性を殺すことができなかった。
洋介に育てられた亮介の優しさと、洋介の過去のシーンと重なる場面だと思いました。

美紗子は人間の死がユリゴコロだったが故に洋介を地獄に落とし、そして運命的に出会った。
そして人間の死がユリゴコロで殺人を何回も犯しているが故に亮介を守ることができた。
彼女は彼女にしかできない、彼女なりのやり方で息子を守りました。

偶然と、運命と、悲劇が混ざりあってとても暗く重たい話なのに愛に溢れている。
最後に幸せが訪れる。
とてもいい映画です。
(この手の映画は大抵、サイコパス強いとか話の筋を無視していたり、えっ?もう終わり?という釈然としない映画が多いんですよね…)

吉高由里子さんと松山ケンイチさん、見事に役にハマっていてとても素敵でした。
吉高由里子さんの感情がないような演技、艶やかな危険をまとった演技、幸せな演技素敵でした。
松山ケンイチさんの全てを優しさで包むような演技、喪失感を漂わせた演技、素敵でした。
松坂桃李さん、サイコパスな演技はよかったのに怒りを露わにするシーンが少し感情的すぎたかなと思いました。
ただ、吉高由里子さんと松坂桃李さん2人とも左利きなのは2人の関係性を匂わせるのにとても良かったと思います。
松坂桃李さんて役者をするために右手も特訓して両利きなんですね、すごいなと思いました。

長くなりましたが、この映画に出会えたこと、とても嬉しく思います。
映像美が素晴らしいのでショッキングな映像が大丈夫な方は映画館での鑑賞をお勧めします。
Runa

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