うずら

拷問男のうずらのネタバレレビュー・内容・結末

拷問男(2012年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

スラッシャー映画だと思っていた。原題、Daddy's Little Girlだなんて。本質は『愛する人を失ったやり場のない怒り』だなんて思ってもなかったのだ。
題材が題材なだけあって人を選ぶ作品だけれど、社会派映画だと思った。現実に傷つけられた人は少なくない。法の裁きじゃ物足りない。同じように痛めつけられればいいなんてこと幾らでも現実にはあって、こんなに遺族がやりたかったタブーのひとつの形を描き切った映画もないのかもしれない。と思った。

見始めてすぐに思った。邦題、かなりよくないぞ。
映画の始まりは拷問からは想像できないくらいおだやかなものだ。本当に丁寧に娘を愛しているようすが映されてゆく。そうやって心にくることするんだから。

犯人がどれだけのことをされても因果応報、同情は湧かない。こんなにきれいな意趣返しで納得させられたことそうそうなかった。痛い、視覚的に痛すぎて同様に呻きまくってもいたけれど、とにかく感心の気持ちが勝ってしまった。それはそれとして、そんな発想なかった……が起こる。最終的に納得のいくことだったけれど……!?

父親のデレクは『狂った』からは遠く感じる。声を出させない細工といい拷問方法といい、どこまでも落ち着いて理性的だと思った。おだやかさを失って、そこが狂っていると言われればそうだけど。彼に見える娘とのやりとりは微笑ましくてもの悲しい。

結局それでも彼が満たされたようには見えなかったな。復讐は心を満たしてくれるか、って問いがあるけれど、痛みはきっと止まない。癒されるわけがないのだ。つらい。
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