冒頭「ウルトラセブン」の「怪しい隣人」ぽいなぁ、と思ったら、原作者の前川知大さんが大のウルトラセブンファンだとか。やっぱりな、という感じで、ふんふん。
また、黒澤清監督が長谷川博己に「これまでの僕の作品のことは忘れてください」と言っているように、本作はいつものホラーテイストではなく、星新一のショートショートとか、ウルトラシリーズの金城哲夫とかが書きそうなSF作品。
侵略者がいつの間にか家族や隣人に入れ替わっているというゾッとするような違和感。子どもの頃に見た「マグマ大使」の「人間モドキ」を思い出すな〜。「ママ」が「人間モドキ」になっているのに誰も気が付かない間の恐怖といったら!
ただ本作の侵略者は人間の「概念」を喰らう。その過程を恐ろしくもあるが、意外と笑いの要素も入れて描いていくので、今までの「黒澤清」のイメージとはちょっと違う。
「家族」「の(所有)」「自由」「自分」
「仕事」「迷惑」「邪魔」etc.
「概念」を奪われて生きる意味を失っていく人々。「概念」を奪われることで幸せになる人もいる。
原作者の前川さんは「見た目ではなく、意味で宇宙人を見せる」ということをまずやりたかったと言っているが、だとすれば松田龍平はまさにうってつけのキャスティングだったろう。空っぽの「器」から「概念」を吸収していくことで、少しずつ「人」らしくなっていく宇宙人を演じるのにこれ以上の役者はいないだろう。ただし、松田龍平に対する黒澤清監督の演出は「そのままで」いいという言葉だったそうですが(^^)。
宇宙人の侵略が進む中、最後に奪う「概念」が秀逸。「そうきたか」と。長澤まさみの熱演もあって、最後に泣かされる。
なのに、あのラストは嫌いだな〜。
原作ものだから仕方ないんだろうけど、「概念」を奪うという能力がおもしろかっただけに、物理的な侵略なしに、この「概念」を奪うこと=「侵略」という感じに捉えれば、もっといい感じのSFになったんじゃないかな? 本当に、冒頭と最後の映画的な派手なシーンはいらないな〜。
30分に凝縮して、最後に巨大化してくれちゃったりしたら、「セブン」の1エピソードとして良い話になったろうにな〜。
見終わった後、いろいろ語りたくなる、黒澤清の異色のSF作品です。
(余談ですが、長澤まさみって、こんなに胸、大きかったっけ? えらい揺れます(^^))