湯呑

散歩する侵略者の湯呑のレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
4.8
ただただ、素晴らしい。『CURE』で描かれた幸福な解放感を伴う自我の喪失、『回路』を思わせる光溢れる荒廃した世界の風景、『岸辺の旅』が活写した喪失感と背中合わせの愛の充足、『クリーピー 偽りの隣人』で見せた倫理的なまでに異常な共犯関係、黒沢清はこれまで相矛盾する複数の要素をまとめ上げる事で唯一無二の世界を作り上げてきた。お得意の猟奇的な殺人シーンから幕を開ける本作は、ひねりの効いたストーリーテリングで観客を楽しませながら、侵略SFというジャンル映画の枠組みを利用しつつ、過去作のモチーフを豊かに変奏する。図々しいまでに楽天的な結末と、長澤まさみの悲痛な無表情の対比が胸を打つ。
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