劇団イキウメの同名舞台を黒沢清が映画化。残念ながら舞台の方は未見でございます。
まず前作クリーピーがベストオブ黒沢清的な内容な上に大衆性も非常に高いレベルで両立した傑作でした。そして本作も同じスタンスではあると思うんですが、よりストレートに劇団イキウメの影響が下されているのかな？？と感じました。よってクリーピー以上に分かりやすく、風通しの良いエンターテイメントになっていましたね。てか普通に最後の方とか泣いちゃいました。
本作はいわゆるボディスナッチャーものだと言えると思います。しかし、本作の特異な点は「概念を奪う侵略者」という設定。これが非常に面白くて、額を触られた人間は頭に思い描いていた概念を奪い取られ、ごっそり抜け落ちてしまう。この概念を奪うシーンはほとんどが会話劇なんですが、ここは非常にイキウメ要素が強いのかな？と思います。侵略者側は相手に奪う概念を頭に思い描いてもらわないといけないので、そこに至るまでのロジックの積み重ねとしての会話の面白さ。そして地球人との噛み合わない会話の面白さが絶妙なシュールさを醸し出しています。そして奪う瞬間は実に黒沢清らしい演出が多くみられます。顔に影がかかってきたり、レンズフレアを使ってみたり、風車が回り出したりとこれぞ黒沢清！という演出の数々。とくに風車の演出は非常に見事だと思いました。
また世界の終末を描く話でありながら、全体的に「まぁ終わっちゃってもいいかなぁ〜」みたいなゆるい雰囲気が流れているのもとても心地良いですね。概念を奪われた人たちは人格が崩壊してしまうんですが、そこに若干の解放感があって、映画全体もそれに似た抜けの良さがあります。ここも黒沢清らしいなぁと思いました。
役者陣で言いますと何と言っても長澤まさみ。わたくし長澤まさみ死ぬほど好きなんですけど、今作でベストオブまさみ出ました。あのツンデレ具合はやばい。もう可愛いとかそういうレベルじゃないですよ。世界が終わるときにはまさみが隣にいて欲しいなぁ。
あとはアンジャッシュ児島が出てくるシーンがとても面白かったですね。多分登場以前に概念をいくつか奪われているからか、初っ端から落ち着きを失ってしまっている笑。「自分は.....自分だよ！」みたいな取り乱し方が最高に面白かったです。
