しゅん

あなたは、あたしといて幸せですか?のしゅんのレビュー・感想・評価

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演劇のドラマと道端のドラマが重なって乱反射する。退屈なようで全然退屈じゃない。これは衝撃的な体験。

清澄白河のSPACで、飴屋法水とその実の妻と娘が出演した演劇をそのまま収録した映像作品なのだが、実際のステージは一切映さない。代わりに、舞台に面した道をカメラが定点で捉えていて、色々な人が映り込む。道路から劇が見えるから、気になって舞台を覗きながら通り過ぎる人もいれば、全く気にしない人もいる。時々演者が道に飛び出したとき以外に、視覚で劇を確認する術はない。映画の観客はほぼ音声のみで劇を鑑賞することになる。

演劇はシナリオや演出といったある種の必然を抱え込むけど、カメラに映る街の姿は偶然そのもの。定められた世界に非決定な要素が入り込んでいく。このスリリングさで、僕はずっとドキドキしていた。陽射しが傾いて外が暗くなるだけでドラマが生まれることに、心底驚いた。劇中、赤ん坊の成長について母が独白するちょうどその時に、ベビーカーを押す夫婦が街中を通り過ぎる場面なんかちょっと感動してしまったよ。
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