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チップス先生さようならのrumblefishのレビュー・感想・評価

チップス先生さようなら(1969年製作の映画)
4.0
良く言えば実直、悪く言えば堅物のチップス先生。冒頭、生徒を思う気持ちを上手く示すことが出来ず、テニスの決勝戦を控えたサタウィックに杓子定規に補修への参加を強要してしまう。

そんな面白みにかけるチップス先生だが、キャサリンとの出会いから結婚に至るまでが、前半じっくりと描かれる。途中まではがっつりチップス先生の恋愛のお話だった。

本作はなんと言っても妻のキャサリンが魅力的。女優から教師の妻になるという決心にも、彼女の愛の強さが感じられる。
理事のサタウィック卿が校長に、彼女は教師の妻にふさわしくない、生徒に悪い影響を与えると言っているのを聞いてしまい、一度は逃げ出すキャサリンだったが、チップス先生が彼女を連れ戻す。チップス先生、すっかり情熱的な男になっている。先生はサタウィック卿にがつんと意見する訳だが、学校にやって来たキャサリンの友人の女優アースラがもう最高。ここのくだりが一番面白かったかな。

教壇に一輪挿しを飾ったり、チップス先生も変わっていく。

校長になったチップス先生の、退任のあいさつのシーンは胸に迫るものがある。恨みや怒りを覚えず、新しい時代の波を受け入れるべきだと説く先生。戦時中の臨時の校長だったと卑下する先生を、生徒たちは万雷の拍手で送り出す。仕事を誠実にこなし、妻を愛した英国紳士の人生は清々しい。