しおまめ

メアリと魔女の花のしおまめのレビュー・感想・評価

メアリと魔女の花(2017年製作の映画)
3.7
あえて言いたい。ガチの評価は次回作に!!

米林監督作品を見たことない自分が公開初日に行った理由。それは米林さん・西村さん両名による新境地でのスタートであるから。
多分勘違いしてる人多いと思いますが、これはスタジオジブリ作品ではありません。スタジオジブリの製作部門は現在解体されており、最近話題になった宮崎駿の復帰報道もスタッフ募集から始めてるあたり、恐らくは大学サークル並みの小さな規模の可能性があります。
この作品はスタジオポノックと呼ばれる米林監督と西村プロデューサが、旧ジブリスタッフを引き連れて作った新スタジオです。公開同時期には背景スタジオの”でぼぎゃらりー”も設立し、そこに至ってはドワンゴの川上さん、庵野秀明さんも参加しています。庵野さんに至っては今作にも関わってます。

で、この作品、のっけから普通の映画と違います。
冒頭の物語の始まりどころか、東宝や日テレのロゴマークが出てくる段階でおかしなところがあります。それはスタジオポノックのロゴマーク。
ジブリのロゴと言えば、青背景に白線画で描かれた左を向いたトトロの絵。
そしてスタジオポノックのロゴは・・・白背景に黒線画で描かれた少女(メアリだったかアリエッティだったか)が左を向いた絵。つまりジブリのものとほぼ同じものなんです。
正直これ見た時笑いました。が、その後物語が始まって早々に更に笑いました。あまりのジブリ作品のオマージュばかりで。
もうオマージュの域超えてます。カメオ出演です。それぐらい似たキャラクターを出していますが、これを製作側が面白くさせるつもりでぶち込んだのかどうか考えたとき、ちょっと違う印象を受けます。

この作品におけるオマージュ(というかパクリというか・・・)は異常です。冒頭の魔女の宅急便で見たことあるキャラクターが出てくる時点はまだわかるのですが、そのキャラクターのやり取りが、本当にわざとらしくジブリ作品を彷彿とさせるのです。
いわゆるテレビのネタです。魔女宅で飛行船の事故を映し出す老婆宅のテレビのネタをこの作品でやっているのです。そのテレビが物語上大きな意味を持っていることはありません。
つまりこの作品のオマージュ、製作側は承知の上でやっているのです。ビジュアルのみならず、セリフもそう。わざとではないというほうが難しいほどにあからさまで、それは製作側もわかっていると考えるのが妥当なほど。いくらオマージュでももっと工夫するはずと勘ぐるほどわざとらしいということは、製作側はそのオマージュが必要であると考えたからです。

なぜ必要なのかというのは物語終盤でわかりました。
それまで散々オマージュを見せられた先、結末へと向かう際、メアリは「〇〇〇〇〇〇いらない!!」と言い放ち、物語を形作っていたものを否定します。
その言葉はまさしくジブリがいままで描いてきたことの否定とも言えるもので、同時に物語の舞台は一気に崩壊し、メアリは元の家へ戻り、新たな家族(エンドロールではNEW FAMILYと書かれていました)のもとで暮らしはじめるところで幕を下ろします。
ジブリの多くのオマージュをふんだんに埋め込んだことの回答が、メアリの言い放った台詞というのは、つまるところ米林監督の宣言なのです。スタジオジブリに対する「さようなら」と。
思い出のマーニー以後、スタジオジブリは鈴木敏夫いわく「開店休業状態」。既に製作がスタートしていたレッドタートルを覗いて全ての製造ラインは停止し、仕事無き社員らを拘束するわけにもいかないためリストラ。ジブリスタッフは色々なアニメ作品に関われるようにもなったわけですが、スタジオポノックはジブリという拠り所無くした米林、西村両名のアニメを作りたいという意気のもと作られた新境地なのです。
その声に賛同した元ジブリスタッフらが掲げた第一作「メアリと魔女の花」。それはメアリが言い放ったように、新たな新境地へと向かうための宣言。つまり「さようならジブリ」という別れの挨拶そのものです。

この作品はジブリとの決別を明らかにし、新体制へと向かう第一歩のための作品と言えます。
ジブリという枠組みから別れ、スタジオポノックという未踏の地を突き進むための宣言。しかし別れだけではなく、そんな米林さん、西村さんを育ててくれたジブリに対する「感謝」もエンドロールには書かれていました。
ジブリを代表するあの三人に向けて。


た だ し 、
この作品自体の質は酷いとしかいいようがなく、抑揚もなけりゃ迫真性もない。
大体メアリが事細かに口で言うのが映画を殺してるような状態。小トトロとメイの追いかけっこを彷彿とさせるシーンなんかは、子供でも見ればわかることをいちいちメアリは口で言います。そんなんじゃ見ている側は映画に乗れないでしょ・・・。
BGMなんかはスペクタクル感満載なんですが、演出が淡白で定型文をなぞっただけのようなもの。
ジブリとの決別を宣言した以上、ここから先はジブリという色を脱色したものを作らなければ、この映画で高々と宣言したことの意味がなくなる。
でも、こんな出来栄えで本当に次回作大丈夫か・・・?
しおまめ

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