Mila

メアリと魔女の花のMilaのネタバレレビュー・内容・結末

メアリと魔女の花(2017年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

宝石箱の中身がガラス製だったことに気づくみたいに、がっかりした。

感動したのは、一つひとつの風景がすごく綺麗だったこと。
どこをとっても鮮やかさが散りばめられたフルーティーな色使いと、ヨーロッパっぽいインテリアや内装が素敵で、まるで本当に丁寧に描き込まれた絵本を見ているよう。
お家の外のお花の灯り、本当にあったらいいのにと思ったし、魔法大学はそのままテーマパークにできそうなほどに繊細で、どれも印象的だった。

でも、キャラクターや動物に生命が感じられなかった。


ストーリーの核は、「制御できず誰かを傷つける魔法なんて捨てるべき」というメアリの思想。
メアリは制御できない魔法を使えなくし、自身もその力を放棄した。この結論とここに至るまでの説明は、私には原発反対にしか見えなかった。
魔法の国がぶっ壊れたり、魔法大学の悪役が死ななかったりしたのは、原発みたいなことをやろうと考える存在自体が、どんなに頑張っても消し去れないからじゃないだろうか(それとも死刑反対が入っていたのかな?)。

確かに、制御できない魔法を放棄したことについて、メアリはいいことをしたと思う。
でも、「なぜダメなのか」の話し合いがなかったし、魔法の恩恵を受ける必要がない世界から魔法を消してもメアリたちに痛みはない。
その結果、ただ純粋な子供が自分の周りの生活を守るために、一方的に魔法の一部を奪ったに過ぎないストーリーになっていて、なぜ原発ライクなテーマにしたのか分からない。

そんな、綺麗な景色で着飾った左寄りな思想を、「メアリの純粋さ、いいでしょう?」と押し付けられているような気がして、説得力に欠けていた。
私は原発反対に異議なしだからまだいいけど、右っぽい人には鼻で笑われそう。


ジブリ出身の監督であれだけ既視感のある画だったから、ストーリーが期待はずれだったのは正直言って残念だった。

上記の他にも、言いたいことはたくさんある。マーニーっぽさもあり途中で先が読めちゃう展開、ほとんど大学の2人と大学の建物でしか表されない魔法の世界。
かといって登場人物の感情や成長が描かれていたというわけでもなく、心があまり動かされなかった……。
そのせいか、せっかく神木くんの声だったけど特に印象にも残るシーンもなかった。

色々書いたけど、また米林監督の作品を観たいかって聞かれたら、図々しいことにもちろん観たい。
せっかくあんなに綺麗な風景を描く力のあるスタジオなのだから、同じくらい心に残るお話がまた、これからも観たい。
監督が少し落ち着いて、次の作品も素敵な人たちとお仕事できていたらいいなぁと、勝手に考えてしまった。
Mila

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