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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのEDDIEのレビュー・感想・評価

3.9
人生を賭けて取り組んできたフィギュアスケート…ある日そんな大切なものを取り上げられたら。女子アメリカ選手として史上初のトリプルアクセルに成功したトーニャ・ハーディングの波瀾に満ちた人生に迫る実話を基にしたストーリー。

1990年代前半に世界を騒がせたトーニャ。私はまだガキンチョだったので、世代ではありません。だから本作で題材にされたスキャンダラスな出来事は知る由もありません。
女子スケーターとしては伊藤みどりに次ぐ史上2人目のトリプルアクセルの成功者。
わずか4歳の頃からアイススケートに人生を捧げ、スケート一色で母と二人三脚で頑張って来た彼女。ただし、横暴な母に育てられたためか、トーニャはかなり素行面が不良でした。
そして、彼女の人生を大きく狂わすことになる夫となるジェフとの出会い、結婚。最初は愛し合い想い合った2人も、性格のすれ違いから徐々に生活が狂っていき、夫ジェフは日常的に暴力を振るうようになっていきます。

本作のサブタイトルにもなっている「史上最大のスキャンダル」。
ウィキペディアにも載っていますが、トーニャのライバル選手であるナンシー・ケリガンが何者かの手により大怪我。これがトーニャの人生を大きく狂わしていくことになります。

とにかく本作において母親のラヴォナがとてつもなく強烈。「トーニャは怒らせないと力を発揮しない」とDVする理由にはなり得ませんが、とにかく厳しい。暴言も暴力も何でもあり。だけど、そんな母親と対峙しながらもトーニャは成長していき、結果を出していきます。
で、トーニャの夫ジェフも、その友人も馬鹿野郎の掃き溜め状態。つまり、本作に登場する主要キャラたちは揃ってクズなわけです。

本作のような実話を映画化することの意義は、ニュースで誤った認識を持った人々の誤解を解くことにあると思います(もちろん語られた真実がいかほどに真実なのかということもありますが)。
その点において「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の真相を伝える意義はとても大きいものです。トーニャは首謀者なのか、関係しているのか、はたまた知らなかったのか。
とにかく自分の保身しか考えない登場人物ばかりなので感情移入するのは難しいです。ただ、これが実話なわけですから、その時の彼らの心情を想像しながら観ると結構楽しめました。どこまで真実を語り、どこまで黙って自分の心に閉じ込めておくのか。

トーニャを演じたマーゴット・ロビーの徹底的な役作り。訛りまで研究したというからやはりこの人の女優魂は凄い。さすがにスケートのシーンはスタントダブルを使ったみたいですが。
そして、その母ラヴォナを演じたアリソン・ジャネイもアカデミー賞助演女優賞も納得。とんでもない母親でしたが、完全に役をものにしていましたね。
クズな夫ジェフを演じたのがセバスチャン・スタン。ちょび髭スタイルの容姿は、彼だと感じさせないほど別人。DVをはじめとしたクズっぷりを全身全霊で演じたのを肌で感じます。
その友人で妄想癖の強いデブ、ショーンをポール・ウォルター・ハウザーが演じます。こいつがまた救いようがないクズ。

とにかく汚い言葉を並べてしまいましたが、彼らの演技を堪能するだけでもかなり観る価値があります。
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