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ピーターラビットのJIZEのレビュー・感想・評価

ピーターラビット(2018年製作の映画)
4.3
英国の農業が盛んな湖水地方を舞台に大きなもみの木の巣穴で暮らすラビットたちが大都会から越してきた潔癖症の男に追い立てられる軽やかな大騒動を描いた名作絵本の実写化映画‼2D吹替で鑑賞。原作者ビアトリクス・ポターの原作は未読。序盤でメインテーマの牧歌調な「I Promise You」が鳴り響き直ぐ様ゴキゲンでカラフルなジャケットを身に付けたウサギたちが暮らす平和で愛しい世界観へ没入した。結論から呈せば完成度が極めて高く,元ねたをほぼ踏襲している事からも造り手側の余裕を実感させる。単に原盤をなぞるだけではなくピーターラビットそのものの延長線上を描いたような実写版であった。畑の縄張りをめぐってマグレガー叔父とラビットたちがぶつかり合う最初から「ホームアローン」ぽい感じでラビットたちの息の合った連携ぷれいと併さり面白い。悪知恵を活かしたウサギたちが電気フェンスやネズミ用トラップ,ブルーベリーの投げつけなど身体能力を遺憾無く発揮させ素早い動作から敵を翻弄させる。可愛さと憎さが同時に込み上げてくる感じやおでこを重ね合わせ謝る作法などテッドやパデイントンを遥かに凌駕していた。世界観そのものは控え目でコンパクトだけれどスマートな描写の積み重ねからジャンルの枠組みを飛び越え質が高いアニマルものコメディ作品である。

→総評(ラビットたちの現代版スパイ大作戦)。
今月の暫定ベスト確定です。また音楽の完成度の高さもほぼ全曲カントリー調で地続きに組み立てられ音色の高揚感が身体を揺らしたくなる。楽曲の名調子もかなり作品に色を添えたように感じた。作品の構造でも田舎パートと都会パートで特に序盤は区切られていたため場面毎における交通整備のされかたが丁寧な印象を覚えました。特にマグレガーが高級百貨店ハロッズの総支配人から潔癖症ゆえに問題児扱いを受けこういう経緯でド田舎まで越してきた伏線の積み上げは良かった。ローズ・バーンが演じた画家ビアの間が抜けてて一度怒りだしたら止めれない感じもギャップがありいい。不満点を出せば恋愛要素の場面単体によるデフォルメがやや不必要に思え映画の趣向が時間の経過とともに別の軸へ傾いていく感じは否めなかった。ゆえにビアとラビットたちとの距離感であり関係性が他人行儀的に見えなくもない。ご近所付き合いの距離感から前進させる何かが絵的にでも足りなかったように思える。原作のスピリットにあたる自然との共存や動物との触れ合いから脱したやや悪知恵満載のブラック映画ではあるがラビットたちの満面の笑みや可愛さ,憎さだけで元がとれ童話の世界観に入り込める傑作だ。
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