朝ごはん

犬ヶ島の朝ごはんのネタバレレビュー・内容・結末

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

近未来の日本。犬を駆逐する政策が進められるメガ崎市で、愛犬を救うべく一人の少年と、犬達が立ち上がる。

まるで、生類憐れみの令のような話だ。但し、映画では犬は保護の対象でなく、排除される側にまわる。長崎との語感の類似から、犬ケ島は出島のイメージに重なる。何度か登場するキノコ雲は、原子爆弾の象徴だろう。同時に、本作が3.11を念頭に置いていることは明らかで、過去ではなく、現代的な問題にスポットを当てる。一見ステレオタイプ的な日本イメージを散りばめながらも、極めて深い日本への理解が垣間見える。例を挙げよう。
おそらく、七人の侍など、日本映画へのオマージュは各方面で語られるだろう。ここでは日本美術との関連について一言二言。本作の制作にあたり、浮世絵を渉猟したと監督自身が述べるように(http://bunshun.jp/articles/-/7509?page=1)、 有名な北斎の神奈川沖浪裏をはじめとする、浮世絵のイメージが組み込まれる。しかし浮世絵だけでなく、洛中洛外図を思わせる絵作りも見られ、本当によく勉強したのだと好感が持てた。また、劇中で多用される横スクロールのカメラワークは、日本の絵巻的なストーリーテリングに近い(但し、絵巻と逆で左から右への移動)。

また、五条大橋での牛若丸と弁慶のイメージが何度か登場していた。多少穿った見方かもしれないが、主人公アタリに牛若丸が重ねられているのではなかろうか。アタリと牛若丸は両親の不在という背景が共通している。アタリが牛若丸であれば、弁慶はチーフだろうか?兄弟と幼くして生き別れた牛若丸だが、チーフとスポッツ、二人の兄弟の絆が本作で描かれている点も興味深い。
少々妄想を働かせ過ぎたかもしれない。しかし、家族の絆という普遍的なテーマ描く本作に、平家物語をはじめとする過去の物語が想起されるのも当然で、色々と語りたく映画だ。テーマ的に真新しさを感じることはなかったが、圧倒的映像美は素晴らしいの一言!とても面白かった。
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