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キング・ホステージの鰹よろしのレビュー・感想・評価

キング・ホステージ(2017年製作の映画)
3.0
 少年青年期のとある事件を機にその後の人生の明暗を分かつことになった兄のマイキーと弟J・Pの、海よりも深く山よりも高い友情と絆と愛の物語...

 弟のJ・Pは生まれ育った貧民街で起業家となり雇用を創出することで地域に貢献。美人な奥さんがおり子宝にも恵まれ公私ともに順風満帆、所謂成功者としての人生を歩んでいる。

 片や兄のマイキーは街を裏で牛耳るキングとの腐れ縁はなんとか切れたものの、職に就かず毎日フラフラ。J・Pの助け舟も拒絶し、借りたお金もコカインにつぎ込みパーにしてしまう始末。妻子はいるが犬猿且つ疎遠状態。幾度となくあった再起のチャンスをみすみす棒に振っている。

 そんな折、マイキーはキングと再会。キングはマイキーの現状を知り、良い儲け話があると提案してくる。その後J・Pに何者かからマイキーを誘拐したとの電話があり大金を要求してくるのだった。

 J・Pは真っ先に友人の刑事サルに相談。しかしマイキーの自作自演を疑われ、警察は組織として動いてくれないという。同僚も妻さえも疑いの目を向ける中、J・Pはなんとかサルの協力を得、単独でマイキーの救出に奔走する。

 傍から見たら一見不仲にも見える少年青年期の兄弟の関係を、家の外で同世代の友達とつるむときにいる弟の存在、家の中で頼りとなる大人がいないときの弟の存在、保護者であった叔父?が亡くなったことでの弟の存在、と彼らの境遇故に弟を思うが故にそうせざるをえなかった点を交え、兄の視点で紡いでいく演出は丁寧で。

 またキングの境遇を据えることで、マイキーとJ・Pの関係が逆転ないし共倒れしていたかもしれないとする可能性の示唆もこだわりを感じる。

 要所要所で、というか事あるごとにスローモーションが多用されており、その瞬間を引き延ばしその一瞬に沸き上がった感情とその変化をこれでもかとフィーチャーしているのが気がかりだったが、

 周囲の誰もマイキーを信用していない中「一度たりとも兄に対し疑いが生じなかったか?」と、マイキーがJ・Pの兄として時に父親の代わりとして尽くしてきた恩に対するアンサーとして、J・Pのマイキーに対する信頼を兄弟の絆を問う演出だったのだと勝手に納得。熱いモノを感じ嫌いにはなれない。

 それよりも問題はだ・・・、

 ニコラス・ケイジと以前共演してる「フローズン・グラウンド」然り、最近のジョン・キューザックの動向を見ていると、終始心を許せずこいつが黒幕なのではないだろうかと疑ってしまうことだ。

 この本来あるはずのなかった勝手なわだかまりが無ければもっと兄弟のドラマが活きてきた、というより映えて見えるはず。ジョン・キューザックを疑わず全幅の信頼を寄せて観てほしい。私は最後まで信じることができなかった。

 まぁ意図してかせずか、仮に疑いが生じたとしても上記の事項との兼ね合いでなんだかんだ奏功している様にも思えたり思えなかったりするのでアリっちゃアリか、いやナシか。


「マイ・ブラザー」(2009)...「ウォーリアー」(2011)...「バトルフロント」(2013)...「クライムスピード」(2014)...「トラフィッカー」(2015)...「インフィニティ 覚醒」(2018)...
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