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持たざるものが全てを奪う HACKERのWefのレビュー・感想・評価

3.5
【ハッカーは、人間をやめられるか?】
 
ハッカーは、コンピュータを利用して「仕事」をする。
 
コンピュータを操作するのは人間だが、インターネットを介して行き来するのはデータである。ゆえに、インターネット上では何者にもなることができる。
 
クレジットカードをハックできれば、他人になって買い物ができるし、
パスポートや運転免許証を偽装すれば、他人として世界中を移動することもできる。
その意味では、今や世の中はコンピュータを介さずとも、身分証明書というデータで成り立っているともいえるかもしれない。
 
だからこそ、この映画の邦題である「持たざる者が全てを奪う」が可能になる。
潤沢な資産も強靭な肉体も必要ない。
PCとそれを活用する頭脳さえあれば、欲するものを手にすることができる。
弱肉強食と下克上の世界。
優れた頭脳を持つ者が、それに及ぶ頭脳を持たざる者から求めるもの全てを奪う。
ただし、その立場が逆転することも十分に起こりうる。
 
ソーシャルエンジニアリングと呼ばれるハッキングの手口では、ヒューマンエラーを利用してコンピュータへの侵入を試みる。この手口において狙われるセキュリティの脆弱性とは、コンピュータを扱うのが人間であるということである。
この脆弱性はハッカーにも同様に存在しうる。
 
この映画において、綻びはハッカーの人間としての側面から生じたと感じた。
ハッカーにも感情があり、家族がいて、友人がいる。
それら一切を捨てて冷徹に「仕事」を続けていたら綻びは生じなかったかもしれない。
しかし、孤独に自分だけの利益や目的を追い求めることはできるのだろうか?
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