似太郎

軍旗はためく下にの似太郎のレビュー・感想・評価

軍旗はためく下に(1972年製作の映画)
5.0
🪖完全に平和ボケした日本に向けて一石を投じる巨匠、深作欣二の反戦映画にして超問題作。
主演の左幸子が『飢餓海峡』に匹敵する名演技を披露している。彼女の夫で軍人役の丹波哲郎もまた、素晴らしい。

🪖この頃の反戦映画はとんでもなく「重み」というか「陰鬱さ」があり、やはり観ていて凹むものがある。深作欣二らしい戦後史観は、晩年の遺作『バトル・ロワイアル』にも通底するアイロニカルな雰囲気がある。日本の偽善的民主主義にメスを入れたという意味でも。

🪖脚本を担当したのは新藤兼人で、やはり深作欣二と似てロジカルな作りなのが面白い。本作が『仁義なき戦い』以前に作られたのを考えると、当時の深作は相当日本の現状に鬱憤が溜まっていたのではないか?と考える。涙を流して人肉を食らう三谷昇が実に哀愁があって良い演技。彼に裏アカデミー助演男優賞を挙げたい。

🕊テンノーとかケンポーとかが本来、薄気味の悪いものだという事が本作を観ると良く理解できる。そこも『バトル・ロワイアル』とそっくりで、日本の平和(戦後民主主義)が長続きしない事実を容赦なく突きつけられた思いがする。この「事実」を今だからこそ真摯に受け止めるべき。
似太郎

似太郎