軍旗はためく下にの作品情報・感想・評価

「軍旗はためく下に」に投稿された感想・評価

モノクロの戦場写真、南方で飢餓にあえぐ兵隊とカラーで撮られた浮浪者や盲目となった男の対比が印象的。
帰還兵の回想といえば本作の十年前に江分利満がやっているが、これほど昭和二十年からの時間的、心理的な隔たりを感じさせるもにではなかった。
ただ、演技、編集のうまさに比べて左幸子の聴き方や逆コースを絡めての文明批判が説明的(というか新藤兼人っぽい)で反応に困った。
毎年この時期になると、必ず戦争を題材にしたものを観るようにしてるけど、今作も色々と考えさせられるものだった。
戦地の最前線という極限状態に置かれた時、どのように振舞い生きて行くことが正義なのか?普遍的な正義なんてそもそもあるものなのか?
そういったことを踏まえ、では、恵まれた平和を享受し、日々を過ごすことのできている現在の中では、どのように生きることが可能なのか?なんてことを先人達から学び、また彼らから時代を越えて問題を突きつけられているような気がした。
あら松

あら松の感想・評価

4.0
新文芸坐にて塚本版野火と併映。
ひたすら映像の凄みで訴える野火と比べてしまうと、いささか説教的過ぎるように感じてしまうのと、左幸子がことあるごとに喚くのに少しイラついてしまった。
丹波哲郎に限って芋泥棒で処刑なんてされないし人肉など食べない!と言いたげな語り口は、野火を観たあとだとあまりにも欺瞞的で独善的に見えてしまった。

でも「天野陛下ァーー!」という叫び声、奥崎謙三的に戦後数十年経っても"戦中"に取り残されてしまった人の姿は余りにも切なく、自分が生まれ育った不自由の少ない、繁栄したコンクリートの街はそういった人々の苦しみが下敷きにあると思うとやるせない気持ちになってしまった。
要するにお説教は覿面に効いてしまいました。
塚本晋也版野火との二本立てだったが、どちらも戦争と現代を結びつけるような映画だった。
この映画を観て映画ファンなら誰でも原一男の「ゆきゆきて神軍」を想起するだろうが、こっちの方は劇映画としてしっかり芥川龍之介の「藪の中」方式、言い換えるなら黒澤明の「羅生門」方式で物語が進んでいって、単純にサスペンスとしても面白い。

ゾッとしたのは千田という陸軍将校のひとことだ。
「帝国陸軍は三十年後必ず再起し、鬼畜米兵をひとり残らず叩き斬る!」
千田が現代によみがえりつつある。
ボクシング協会のアイツとか、日大のアイツとか、千田そのものだよなと思う。
千田は三十年後橋の上で何を言ったか。
「捕虜を殺したのは、後藤くんの独断であって私は一切関知しない」
と、孫の前で平気で嘘を言える鈍感な奴が偉くなるのが今の日本だ。
今の日本というより戦後ずっとそうだったのかもしれない。
だって、A級戦犯が総理大臣になっちゃう国なんだもんな。
あー、やんなるな。
ってそういう映画を深作欣二は撮り続けて死んだ。
ずるい大人、ずるい下っ端を無視せず告発し続けた。
そういう風に捉えると、ますます奥崎謙三と深作欣二が被ってくる。
両者の違いはもしかしたら、自分の思いや狂気を語る術を持っていたか、いなかったかということだけなのかもしれない。

また、上官殺しに至るまでの過程をここまで丁寧に描いた映画もないのではないか。
戦後、天皇陛下の責任の所在を曖昧にする事でなんとか秩序を保った戦後日本で、上官殺しを肯定的に描く事は、国家自体の否定に等しい。
そこに切り込んだ、深作欣二と新藤兼人の誠実さ。
「ゆきゆきて神軍」と双璧をなす戦争映画の大問題作。
おかつ

おかつの感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ゆきゆきて、神軍と実はかなり似た構造を持った映画。

第二次大戦下の人肉食や上官の理不尽極まる命令、兵士の非業の死が描かれます。しかし当時を語る資料はあまりに少ないのか(意図的に処分したのか)、それら事実が公表されることは殆どありません。
私の祖父は大戦中は中国にいたようですが、彼もまた戦時中のことは全く語らなかったそう。

真実を知るため執念深く聞き込みをする未亡人左幸子が上手い。この人は飢餓海峡の時も本当に良かった。
またその夫を演じる丹波哲郎も素晴らしい。
冒頭の左幸子とのラブシーンは、これより戦場に行く男の覚悟や焦燥、恐怖が滲み出ていて、とても愛おしくセクシーです。


そして怪優三谷昇!
どうか長生きしてください。
丹波哲郎の演技が素晴らしかった。
こんな終わり方する人生もあるんだと‥。これが戦争‥。
otom

otomの感想・評価

4.7
壮絶。脚本に新藤兼人が名を連ねているだけあって、後の『わが道』みたいな藪の中テイストがある。それでいて深作的な激しさと緊迫感で釘付けになる。「末端に対して誠意がない」って台詞は今も昔も当てはまるよな。凄まじい。傑作。
emi

emiの感想・評価

3.5
夫が敵前逃亡の罪で処刑されたという通知に納得がいかない未亡人が、戦後20年経って生き残った当時の関係者に話を聞いて回るうち、痛ましい真相が明らかになる。戦争のむごさと愚かしさ、その犠牲の上に築かれた繁栄への複雑な思いを考えさせられる作品。
小一郎

小一郎の感想・評価

4.2
東京・渋谷ユーロスペースで、現役日藝生の企画・運営による映画祭「映画と天皇」にて鑑賞。戦争における苛酷な現実と不条理を描き、そして天皇の戦争責任をチクリと刺す映画なのだろうか。

昭和27年、「戦没者遺族援護法」が施行されたが厚生省援護局は、富樫軍曹の未亡人サキエの遺族年金請求を却下した。「戦没者連名簿」によれば富樫軍曹の死亡理由は「敵前逃亡による処刑」であり、遺族支援保護法では軍法会議により処刑された軍人の遺族は扶助の対象外だから。

しかし、処刑や軍法会議の記録などは何ひとつなく、そもそも富樫軍曹が敵前逃亡したかどうかも定かでない。サキエの執拗な追求に厚生省は、当局の照会に返事をよこさかなった者が4人いて、何か知っているのではないかとサキエに伝える。真相を明らかにすべく、サキエが4人に会いに行き、過酷で理不尽な夫の戦争を追体験する。

この映画を見ている最中、ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』がオーバーラップして仕方なかった。特に千田少佐との場面では、その上から目線の物言いに歯がゆくなり、『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三ならタダじゃおかないぞ、と思った。

ところで、元外交官で作家の佐藤優氏のトークショーがあり、彼は『羅生門』に似ていると話していた。サキエに話をする者達は言いたくないこと、自分にとって都合の悪いことは話さない。しかし、複数の人に話を聞いていくうちに矛盾点が出てきて…、みたいなことは『ゆきゆきて、神軍』でもあったと思う。

奥崎謙三が戦争の理不尽に怒り行動し、天皇の戦争責任を追求するのに対し、サキエは戦争の理不尽を知り、夫・富樫軍曹の天皇への思いを知りながらも、それらを飲み込み、胸の内に秘めることにしたように見える。

観客は奥崎謙三に対しては、痛快に感じるか、鼻白むかだろうけど、サキエに対しては彼女のやるせない気持ちに共感する。

佐藤氏は、本作について「天皇神話に包摂されているという日本の在り方を(作品外のところで)見事に示している」という。戦争を批判し、天皇をチクリと刺すようなことを描いていても、この映画を見た人が天皇の戦争責任を追及する行動に出ることはない、と。

そういえば『ゆきゆきて、神軍』を見たとき、原一男監督が上映後のトークで「公開当初、凄く深刻な内容なはずなのに何故か笑いが起きていて意外に思った」というようなことを話していた。

佐藤氏の言いたいことは、我々日本人の無意識には天皇が存在していて、天皇をなくすことはできない、ということだと思うけれど、それはこの映画祭「映画と天皇」のテーマなのかもしれない。

●物語(50%×4.0):2.00
・『ゆきゆきて、神軍』を見ていなかったら驚愕したかもしれない。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・深作欣二監督の代表作という話も。やっぱり凄いです。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・迫力アリ。
Atyang

Atyangの感想・評価

4.8
眼が画面に釘付け
年の瀬に今年最高の映画に出会った

ゆきゆきて神軍で話されていた
戦場の映像化といったような内容

極限状態において浅ましさが剥き出しになった兵士の振る舞いをどうして批判できるだろうか

戦後保身に汲々として責任転嫁ばかりしている人間が社会的地位相応に偉いのか

天皇の話も僅かに出てくる
しかし自分にとっては国家システムの恣意性こそが最も心に訴えかけてくる問題だった
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