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私たちはどこに行くの?のmayaのレビュー・感想・評価

私たちはどこに行くの?(2011年製作の映画)
4.5
イスラーム映画祭にて。舞台はムスリムとクリスチャンが一緒に暮らしているレバノンの小さな村。信仰宗教の違いにより日々の生活の中で嫌がらせや喧嘩が度々勃発し今にも戦争を起こしそうな男性達を宥め、和解させるために巧妙な作戦で立ち向かう女性達を描いた作品。『悲喜劇』という表し方がしっくりくる映画で、宗教対立というシリアスなテーマを扱う中、良いバランス・タイミングでコメディ要素が盛り込まれている。宗教ネタが主となるが、絶妙なユーモア(ブラックなのも含め)が村民の台詞の所々に現れるものだから劇場でも度々笑いがおきていた。(『どこいくの?』『メッカよ!』のくだりが好き。) 女性達も異教徒の集まりであるにもかかわらず対立の様子はなく、仲良く協力しながらウィットに富んだ妙な作戦を企てる。根底にあるのは深刻で根深い宗教対立だけど、若干のミュージカル要素もありコミカルなシーンも多いので、重くなりすぎず鑑賞できました。

強烈なインパクトを残してくれたのが息子をイスラム教徒に殺された後に黒衣をまとう母親の「敵と一緒に暮らすのよ」という台詞。共存を受け入れようとしつつ「敵」という言葉に悲しみや憎しみを含有させているように感じられ、静かに吐いた言葉に恐ろしく重みがあった。そして『私たちはどこに行くの?』という作品タイトルが重要な意味をなしてることがわかるラストシーン。作品半ばで伏線があり、最後にこうやってこの問題提起をしてくるあたり本当に素晴らしいと思ったし、メッセージ性の強さを感じました。最後までクスリと笑わせてくるエンディング、良かった。上映国では賛否両論のようですが、個人的には早くも年間ベスト入りしそうな勢い。
調べたら2011年のトロント国際映画祭で観客賞とってるし、もっと上映して。。。
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