ShinMakita

夜明けの祈りのShinMakitaのレビュー・感想・評価

夜明けの祈り(2016年製作の映画)
3.0
1945年、終戦直後のポーランド。ソ連が管理する田舎町で、フランス赤十字病院が稼働している。負傷した仏軍兵士の外科治療が主な業務だ。そこに、地元の修道院で生活するシスターが現れる。仲間のシスターが苦しんでいるので診てほしいと拙いフランス語で助けを求めるが、対応した女医マチルドはポーランド赤十字かソ連軍に頼めと断った。だがシスターはその場を動こうとはしない。マチルドはやむなく、深夜の業務時間外に修道院に行ってみる。そこには、陣痛で呻く若いシスター、ゾフィアがいた。出産直前だが胎児が留まり危険な状態と判断したマチルドは、すかさず帝王切開を行い、ゾフィアと赤子の命を救うのだった。しかし、男子禁制の修道院になぜ妊婦が…?疑問を抱くマチルドに、副院長シスター・マリアが驚愕の事実を語り出す…


「夜明けの祈り」。フランスとポーランドの合作映画で、実話でございます。ズシリと重い作品でしたね〜。

以下、ネタバレの祈り。



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ドイツ軍撤退後、ポーランドにやってきたソ連兵がやらかしたのは…修道院のシスター集団レイプでした。ゾフィアやマリアを含む7人を孕ませてしまったのです。修道院の名誉を守るため、院長たちはコトを秘密にするのですが、ゾフィアの具合がどんどん悪くなり、仕方なくシスターの1人がフランス赤十字に駈けこんじゃったわけですね。秘密を知ってしまったマチルドは、同僚にも上司にも助けを求めることもできず、たった独りで彼女たちのお産を助けるハメになるのです。しかも敬虔なシスターたちは、肌を見せることを拒み、診察もままならないという極めて困難な状況。でも、マチルドの献身的姿勢に次第にシスターたちも心を開いていくんですね。

と、ここまではまぁ、多少ショッキングではあるけど普通に感動できる実話モノね…と 舐めてたら、後半に大きな衝撃というか、試練というかが待ち受けていました。その解決方法もお見事で、割と平坦な実話モノなのに二幕目から三幕目に至る展開がエンタメ脚本の王道のような感じでしたね。重い作品なのに、ちゃんと楽しい映画なんですよ、これ。

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これは、レイプと信仰と命についての映画。マリアが口にするセリフが印象に残ります。「信仰は、幼い子供のようなもの。最初は父親が手を引いてくれて安心できるが、いつか、父親が手を離す時がくる。その時、迷子になるのよ…」。信仰の強さと命の尊さが違うベクトルに向いてしまうこともあるという事実に、色々と考えてしまうなぁ。カトリックの学校で12年を過ごした医者である俺にとって、そしてレイプの加害者側である男性としての俺にとって、忘れがたい映画になりそうです。
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