【鑑賞メモ】
花火と救急車。
自転車で駆ける街。
ブランデーのグラス。

映像がなんだかとても好み。
色彩が柔らかくて、全体的にマットな質感。さりげない光の使い方も端正でいい。特に夜のシーンは、フィルム特有の粒子感とも相まって、美しい光に溢れている。自分はこういうマットな輝きに弱いのかもしれない。

展開や演出はメロドラマチックなところも多く、特にコンサートのシーンは「おいおいもうちょいやり方あるやろ」と思わず突っ込みかけた。全体的に、まぁそうなるよね…という物語ではあるけれど、収束の仕方、ラストのシークエンスはわりと良い。
下手に悲哀や激情に固執して終わるのではなく、主人公にフォーカスを戻すことで、物語の軸がちゃんと保たれている気がする。

ちなみに、東ドイツで撮影され、ベルリンの壁崩壊の日の夜にプレミア上映されたらしい。そう聞くと、ちょっとした歴史的意義さえありそうな作品に思えてくる。

授業で数回に分けて鑑賞。

この作品がベルリンの壁の前日に公開になったことを知ってみると、何かこの映画に運命的なものを感じてしまいます。
男性の同性愛を描くことなんて、この時代難しいことであったはずなのに映画を公開できたということは、それだけ東ドイツの国家体制が機能しなくなってきていたということだと思いました。

そもそも社会の周縁に追い込まれる同性愛者を描いている映画としても貴重だし、そのゲイのコミュニティーの中でも、様々な愛に対する考え方を描いているところもすばらしいです。

このDVD、2万円ぐらいするらしいのですが、もっと色んな人が見られるようにしてほしい。です。

ゲイの悩みをストレートに描いていて結構赤裸々で衝撃的