ダイセロス森本

カーゴのダイセロス森本のレビュー・感想・評価

カーゴ(2017年製作の映画)
5.0
ネットフリックスやるなあ!傑作だよこれ!と終わってひとりで呟いてしまう。そんな作品。
ゾンビウイルスに近い感染病が蔓延したオーストラリア。

「マギー」に似てると言われると、たしかに…って感じはするけれども、これはそれより面白い。

なぜかって、”主人公が前半で感染する絶望的な展開”だから。

もう希望も夢もない。でも1歳になったばかりの娘ロージーには将来がある。もし自分と一緒に居たら、自分が理性を失う48時間後、彼女に未来はなくなる。
娘をどこに預けるとか、自分をどうするとか、そういう「独り言芝居」をしないから、彼が何を想ってどこへ向かうのか、子供をどうするつもりなのかが全く分からない。見ていて面白い。
親としてどういう判断が必要なのか、感染者としてどういう終わり方が正しいのか。理性のあるうちに、悲観的にならずひたすら静かに考える父の強い姿に感動する。

少しずつ症状が出始めたころ、オーストラリアの先住民で感染者の扱い方を良く知るアボリジニの少女に出会う。
子供がひとり増えたところで足手まといになるだけではないか!と思うけれど、これは意外とそうじゃない。屋外で生きられる部族だから知っている知識や、感染者のことを観察していた経験から、彼と娘を助けようとするのである。なんて心強い。

そして父である主人公は、娘をどこへ預けるか、どうやって自分を終えるか考え始めた…。

オーストラリアのだだっ広い大地、そこにいる小さな、小さすぎる人間。成す術もなく彷徨う姿は哀れだけれど、なぜかこれがただの悲しい映画には見えない。「ロードムービー」であり、「家族の愛」「家族以上の愛」を感じられるドキュメンタリー映画のように感じた。

本当に、見えていたラストだけれど、迎えてしまってから、終わりのTHANK YOU まで、愛があふれていて、自然と涙がこぼれた。

良質なゾンビ(?)映画だった。満点。