嵯峨

三度目の殺人の嵯峨のネタバレレビュー・内容・結末

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

こう見終わった後はモヤモヤ〜が残るんすけど、ちょっと考えてくうちに「うわあそういうことか!!」ってなって結局モヤモヤ〜とする映画でした。超良かったです。スルメ映画でした。

是枝作品にしては家族というのを主体としては描かれてなくて、他の作品とは毛色が違う感じがしました、っていうか多分違うよな・・・。でもやっぱちょっとした会話の感じとか、面会所とか度々でるんだけどそれぞれ演出変えてたりと是枝作品っぽさも感じられます。特にやっぱ今回も福山雅治は嫌な感じ・・・っていうかあの弁護士事務所の嫌な感じ感とか「うわぁ・・・」っていう一々こういうちょっとした話し方とかでその人物を描いてるのが非常にっぽいなと思いました。魚のことを「全部」とか言っちゃったり。「いつもの羊羹」だったりと・・・うん、まあそうなんだろうけどっていう。あと、本当に印象的だったのは謝罪文を破かれた時の福山の表情とかもう・・・って感じでとにかく今「表面上はきっちりしてるけどちょっと性格悪い人」を演じさせたら福山の右に出る役者いねえなと思いました。

見終わって普通に「?」ってモヤモヤがあったんすけど、「器」の意味考えるとなるほどってなりました。つまり、ここでいう「器」は人の都合の良い理想を具現化してしまうものとして描かれてるんだと思いました。当然ラストの福山とのやりとりや広瀬すずなんてものはそうだけど、マスコミやらもっと言えば司法やら、そう自分たちの都合の良い方向へ導いてくれる・・・というのがこの三隅という男なんじゃないのかなと思いました。
ラストなんかあのアクリル板つかって同化している演出や、神々しく三隅を映す演出とか・・・っていうか諸々の演出が後から気づく形で本当によくできてるなあと思いました。だから三隅と向き合った者を写す鏡的な役割をしているんすよね。って思ったらサイコホラーっぽくもあって、怖いんすよね。役所広司つながりで「CURE」なんか思い出すぐらい。
そう考えると徹底して「他者のことなんか理解できるわけがない、本当のことなどわからない」っていうのが突きつけられる・・・だからこそモヤモヤするんじゃないかなと思いました。まして、福山は最初からそう言ってたのにでもいざ目の前にそうした現実を背負うと、・・・まさに「十字架」だと思うんですけど十字路で立ち止まるところかとても印象的でした。
ある意味、現実の司法制度の限界でもあるんですけど、何も理解されず何も真実はわからぬまま裁きは行われる、行ってしまったまさに「三度目の殺人」になってるのかなと思ったりもしました。誰もその事実には見て見ぬ振りをしているだけで、それが「世界」っていうの突きつけられてるんすよね。個人的にその世界から脱却しかけた人間こそが、広瀬すずなのではと思いました。カナリアの暗喩もあるけど、最後の福山との会話する「御休憩室」。これこの部屋では大衆の足音の音響が聞こえづらくなってて、世界の隔たりを感じました。だから彼女だけは、世界の構成要素を見て見ぬ振りをしている人間なんじゃないかと思いました。なので、足が悪い理由は本当に工場から飛び降りた説を僕は推します。
もう一回見るとさらに面白いような映画でした。
嵯峨

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