このレビューはネタバレを含みます
すごい映画だ。、
「人は人を裁けるのか」という言葉通り、
映画の結末をも簡単に裁かせないという監督の挑戦状を感じた。
殺人は三隅がやったのか、咲江がやったのか、はたまた2人でやったのか。
(裁判官が判決を出したものの)真相は誰にも裁けず、そして三隅は真実を(咲江を)最後まで守り通した。
それは、最後の面会のシーンで語られていたが、『器』をやり遂げたということだと思う。
つまり三隅による3度の殺人は、あらゆる人の『器』(身代わり、代弁者)になることで、それが自分がこの世に生まれた意味だというようなことも述べ、自分を殺した。
また、重盛は三隅とよく似ていて、北海道を故郷に持ち子供と上手くいっていない様子は、容疑者に感情移入すべきじゃないと言っていた重盛が、三隅を調べたくなる要因でもあるのかなと思った。
判決を自身の予定で曖昧なまま下した裁判官の汚い現実があり、
三隅はそのような人達に裁かれてたまるかと、わざと真実を二転三転させて混乱させたのだと考えると、まんまとしてやられたと思わされた。
スローテンポなストーリー展開や音楽の少なさがドロドロとした感情と事象を示し、役所広司のつらっとした演技が矛盾して事件をサラッと流そうとする。
よく分からない、と言う感想を持ってしまうのは、三隅(監督)の思うつぼにまんまとハメられたということのような気がする。
眉間にシワを寄せて頭を使って見る、そんな深い粘っこい映画に感心させられる。すごい。