光と影の陰影を生かして撮影された硬質な画面が、このドラマの印象をより深く上質なものにしている。
巧みに構成された心理サスペンスにぐいぐいと引き込まれていくが、終盤、本質はそのサスペンスの謎解きそのものにはなかった知らされる。日本の司法の矛盾を突くだけでなく、実はその先にもっと大きなテーマを描いている。
余計な語りは抑え、あえて物語に余白を残す分、見終わった後に、ズシリと重い問いを投げかけられ、それに対する答えはそれぞれの観客に委ねられたかのよう。
ヴェネツィアでは受賞こそしなかったが、かつて金のオッゼラ賞を獲得した´95の初長編作品「幻の光」にも比肩する秀作。