かみつきくんB

三度目の殺人のかみつきくんBのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.5
法廷は真実を明らかにする場所ではなくて、何が事実か認定する場所だ。

というのを昔、法学部出身の友人から教えてもらった時「なんだよそれ」と憤りを覚えたのだけど、この映画に通底するグラグラした熱はおそらく同じものだ。

福山雅治もはじめこそ「戦略」として真実を軽んじ事実の認定にこそ価値を見出しているような弁護士だったけれども、万引きして捕まった娘を迎えに行った後でファミレスでお茶しながら聞いた「あの時なんで泣いてたの?」への応答として娘から嘘の涙の実演を見せつけられた時に言葉を失ったのは、真実を軽んじることができるのはその人が自分にとって何でもないときだけなのだと気付いたからなんじゃないか。

けれども彼の悲しいところで「戦略」が染み付いてしまっているというのがあって、急に自白を撤回した役所広司から「信じるのか信じないのか聞いてるんだ!」と詰められた時に「信じる」と答えることができずにただ「わかりました」というのはあくまでも「(他人のためを思う優しい)戦略としてわかりました」ということだったから、最後にその答え合せをした時に役所広司から「それもいい話だ」と言われてしまうのだ。僕はあそこのシーンでもう役所広司が福山雅治に対しても心を閉ざしてしまったんだろうなと思う。

司法関係者お前らでやる事実認定なんか知ったことか、それで決まる俺の処遇など知ったことか。俺の言っていることを真実だと信じているのか?他の奴らが何と言おうとあんた1人だけでも信じてくれるならそれでいいのに。
そういう叫びだった。