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HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSIONのmのレビュー・感想・評価

HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION(2017年製作の映画)
4.8
冗談抜きで世界でも類を見ないハイレベルで壮大なアクションシーン、異常にキャラ立ちした主要登場人物達とリアリティラインから浮いた絶妙な芝居を貫徹する役者達、日本映画では珍しくしっかり金のかかった美術や衣装や撮影、愉しい小学生的感性と愛せるツッコミ所、映像と完璧に噛み合う歌曲のクオリティの高さ、といったハイローの美点はテレビシリーズや「THE MOVIE 1」の時点で既に完璧に完成されていたが、この時はまだくどくて下手な回想やドラマシーンやギャグのせいで『映画としてはポンコツ』という大きな欠点があった。

しかしテレビシリーズと「THE MOVIE 1」、そして別スタッフによる「THE RED REIN」を踏まえて、ハイローのスタッフ達は自分達の美点をキープしつつ映画としての完成度を高める道を模索し発見したようで、今夏公開の「THE MOVIE 2」は映画としての欠点がほぼ改善された見事な傑作となっていた。

とはいえ「THE MOVIE 2」は「マトリックス」3部作で言う「リローデッド」、凄まじいアクションや事件のつるべ打ちで突っ走れたという有利な側面もあった。今回の「THE MOVIE 3」はアクションシーンがぐっと減って、登場人物達のドラマの収束がメインになる作品。正直「THE MOVIE 1」の二の舞いになるのではと心配していたが、それは杞憂だった。もはやハイロースタッフ達はあの頃の彼らとは全く違う。

ハイローシリーズの美点は全て引き続き健在。
前作より減ったとはいえアクションシーンは相変わらず凄まじく、これまで観た事もないようなカメラワーク(ダイナミックな長回しの美学!)や振り付けが続出する。アクションチームの野心と実力は世界のトップクラスの猛者達と並ぶ。エンドロールでのアクション監督の名前の位置にスタッフ達の自負と敬意が見えた。

感心したのはドラマ運びが格段に巧くなっている事で、前なら目も当てられない事になっていたはずの登場人物達のドラマが的確にスムーズに描かれていく。テレビシリーズの頃はまだ薄っぺらで感情移入できる存在ではなかった主人公の岩田剛典や脇のDTCにも血が通っていて、クライマックス前の主人公達の台詞に象徴されるように彼らが正義の為だけでなく(この正義感も今時あまり見ない清々しさで眩しい)、『青春の終わり』に向けて健やかに暴れる様がスクリーンに活き活きと弾ける。
溜める所は溜めて良いタイミングで弾けさせる娯楽映画の技も随所で巧く使われていて、このシリーズが近年の和製娯楽映画の中では完全に傑出した存在になった事を再認識した。


窪田正孝の登場時間は10分程でとうとうアクションもしないが、役者の演技力と黙っていても溢れ出るカリスマ性、そして画の強い力が短い場面に思いもしない情緒をもたらしている。

爆破シーンでの火薬を使っていない部分のCGがチープな事、スケジュールと予算が限界だったのかクライマックスの一部の見せ場がざっくりと処理されてしまっている事、そして台詞で色々メッセージを言わせ過ぎている事は惜しかった。それから終盤のほんの少しの駆け足感。

愛すべきツッコミ所も前は天然だったが今ではもうしっかり意図されたものになっている。スタッフ達、そして積極的に意見を出して作品を変えていったらしいキャスト達の努力と成長(上から目線みたいになって申し訳ないが)が隅々にまで見て取れて嬉しい。

いくらでもこのまま続けられるのに、ここでドラマを一度終わらせるという決断をした事は支持したい。でも次も楽しみにしてます。

カーテンコールのようなエンドロールに溢れる祝祭感には、思わず笑みがこぼれた。
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