とぶとかげ

『知事抹殺』の真実のとぶとかげのレビュー・感想・評価

『知事抹殺』の真実(2016年製作の映画)
4.0
冒頭に「各報道機関に資料の提供を依頼したが、応じたのは一社だけだった」というテロップが。なのでこの映画は、映像的には過去の写真(恐らく佐藤元知事の私物)や新聞記事の切り抜きの静止画と、関係者のインタビュー、再現ドラマ風部分で構成されている。もし当時の映像が各報道機関から提供されていれば、当然ドキュメンタリー映画としての迫力は違ったはずだ。

もうこの事実だけで「だからマスゴミは」と言いたくなるような出来事なのだけれど、内容は更に上をいく。公権力が「こいつは邪魔だ」と考えたときに行う仕打ちは、これで日本は法治国家と言えるのか?と感じるほど。検察の取り調べを苦に自殺を図る者、偽証をしてしまう者。佐藤元知事自身も、身内や関係者へのマスコミを含めた圧力への居たたまれなさに、早くこの事件を終わらせたい一心で、一度は罪を認めてしまう。冤罪はこうして作られるのだ。

支援者の集会で佐藤元知事が号泣する場面がある。ああ、本当にこの人は辛かったんだと、世界中が自分の敵のように感じていたんだと実感した。同時に、だからこそ、その時支えてくれた人達への感謝の念で、涙が抑えられなかったのだと。カメラは横位置から動かず、淡々とその場面を伝えるのみだったが、ドキュメンタリーの凄みを感じたシーンだった。

「佐藤さんがもう一期長く(知事を)やっていれば、福島原発事故は起こらなかったでしょう」とカメラの前で断言する元GEの原子力技術者。
上映館は少ないようだが、近くに来た際は是非観てみてほしい。そう思える映画だった。