YUKi

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのYUKiのレビュー・感想・評価

4.0
唐突にこの世から消え去った主人公。

トリック・オア・トリートな
コスプレそのもののゴーストが現れたとき、
黙ってこれまでの自分の生活環境を
傍観しているとき、
ただただシュールで違和感すらおぼえた。

でも、よくよく考えれば
死に至り、誰からも存在を認識されることなく
生の世界を彷徨うのだとしたら、
まさにこのビジュアルが相応しいのではないか。
何かの拍子に“見えて”しまったら
裸では説明が必要になる訳だし‥。

たぶん行動の動機は、
ゴーストらしくしてみた。とりあえず。
彼女のそばにいたいから。
という無垢な感覚からなんだろうな。

なるほどなあ。
いわばとても自然な行為。
そしてあり得ないほどの虚無感を纏っている。

最低限に削ぎ落とした演出も
かなり効果的で、静寂の途中
しおりのように挟み込まれる
ある曲が印象的で泣ける。

叙情的すぎず、主人公にも愛する妻にも
自己陶酔などさせないから泣けるのだ。

主人公のとても人間らしいリアルな感情を
語らず設定で丁寧に描いてあるし、
ゴーストとはいえ同調できるシーンも多々。

アナログなトーンとはいえ
視覚効果なんかも見事で
貫かれた作家性を感じた。

自分も自覚なくこうなってしまったら
こうするかも知れない、とか
死後についてふと想いを巡らせる。

観客にそこを考えさせる設定をみると
ホラーでもファンタジーでもなく、
とてつもなくリアリティが先行する作品。
YUKi

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