ただ見守ることしかできず
誰にも気付かれず
哀しさと虚しさを抱えながら、
それでも離れることができない場所から
開放してくれたのは、多分愛なんだと思う。
俳優さんに布をかけて
ずーっと表情を隠す贅沢さとか、
布を引きずりながら進む草の緑が
なんだかよくわからない綺麗さを放っていることとか、
画角の巧妙さにも目が離せなくなって、
紙に書かれた内容よりも
それを求めるひたむきな姿や
その存在や意味に魅了される。
パイを貪るように食べるシーンが痛々しくて
怖かった後に優しく触れ合うシーンが
優しくて柔らかくて悲しくて、
結局誰もが死ぬとしても
無意味なことなんて何ひとつないと思いたい。
時間の進み方の切り取り方も天才。
その場から動かない死後同士の表現も天才。
観終わって、ん?っとなって、数時間経ってから
だんだん心に響いてくる良作。