よどるふ

ワイルドライフのよどるふのレビュー・感想・評価

ワイルドライフ(2018年製作の映画)
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映画における“火”というと、瞬間的で爆発的なものが印象的なのだけれど、本作で描かれている“山火事”は規模が大きく持続的で、ふだん“火”に抱いている感覚が乱される。そんな“山火事”のように人間の関係性も焼け野原になっていく過程が描かれるのが本作だ。

母と息子が車に乗って長距離を移動して山火事を見物に行くシーンは本作の中で最も好きなところ。絶対に危険なはずなのに、「山火事という眼前にある脅威を見物しに行く」行動は、なんだか牧歌的な感じがする。これから終わろうとしているものをスローモーションで目撃する感じか。

使命感から何日間も家を留守にしながら山火事の消火活動に薄給で参加した夫が妻の不貞を知り、そんな彼が激情に駆られて取った“ある行動”には、なんとも言えない皮肉が効いている。そんな事態を経て辿り着いたラストシーンの絶妙な“温度感”は、忘れ難い余韻を残す。
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