ジョジー

ワイルドライフのジョジーのレビュー・感想・評価

ワイルドライフ(2018年製作の映画)
4.0
60年代モンタナの田舎町。裕福ではないながら、幸せそうな一家の団らんがそこにはあり。夫と息子に愛を注ぎ、家庭を守ってきたジャネット。当時のアメリカではきっとこんな家族の風景が当たり前にあったのでしょう。
父ジェリーの失業がきっかけで、夫婦の信頼関係に亀裂が入っていきます。14歳のジョーの眼差しは、その徐々に崩壊していく両親の、そして男女の様を静かに見守るしかなく…。
男は家族を養うのがまだまだ当たり前だった時代、妥協できないプライドと家族の重圧がジェリーを覆っていたのかなと。そして、そんな彼の身勝手な行動が、眠っていたジャネットの内なる心を動かしたのかもしれないなって…
そんなふたりを大きな瞳でずっと見つめ、なだめたり、理解しようとしていたのは、誰でもない14歳のジョーで。本当なら知りたくない両親の一面を見ざるを得なかったのでしょう。
彼がアルバイトを始めたのが写真館。人々の幸せな瞬間を撮るその場所で、どんな風に感じながら写真を撮っていたのかなと心が痛みました。
60年代アメリカらしい楽曲と、ジョー視点でゆっくりと映し出される田舎の風景は、ちょっぴり自分の田舎を思いだし、ノスタルジックな気持ちになれたな。
燃え盛る山火事のように、止めることができない何かを、誰もが心の奥に秘めているのかも。もしかしたらもう戻ることはできないかもしれない… だけどジョーにとっては尊敬し愛する両親との永遠の瞬間に、そっと涙がこぼれました。良かった。

ポール・ダノが初監督を務めた作品。彼の少年時代の心情を投影した映画でもあるそうで。パートナーであるゾーイ・カザンとの共同脚本というのも興味を惹かれました。俳優としてのふたりも好きだけど、才能ある人は何でもできちゃうんですね。
主演のふたり、キャリー・マリガンとジェイク・ギレンホールはさすがの演技力ですが、忘れていけないのが息子ジョーを演じたエド・オクセンボウルド。彼が両親の行動に心揺れながらも、優しく見つめる姿に心打たれました。これからの出演作も楽しみです。
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