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さらば愛しきアウトローのとぽとぽのレビュー・感想・評価

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)
4.5
P.S. やっぱりこの映画好きすぎるなぁ
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"This kind." レッドフォードがあなたの心を盗んでいきます、彼が最後に残していってくれたのは飛びっきりの映画の魔法でしたーーー心温まるし何度も見たくなる。素晴らしい演技と演出だけでなく、素晴らしい音楽、素晴らしい撮影、小気味良い編集、作品全体が愛しい空気感と唯一無二の時間を約束してくれるようだ。製作も務めるシワシワなレッドフォードはそうした作品の雰囲気を軽やかに背負いながら枯れているのに、同時に誰よりも無邪気で若々しい、まるであの日のままみたいだ。テンポの良さも相俟って気負わぬ飄々とした存在感がチャーミング。何より小粋で思わず笑顔になってしまうような遊び心に溢れている。きっとあなたもスクリーンを後にするときには今までよりも少し人生を楽しみたくなるに違いない。ありがとう、最高。
"I'm not talking about making living. I'm just talking about living." 様々な愛と歳月に溢れ彩られていて思わず顔が綻ぶ。監督脚本デヴィッド・ロウリーは今まで本作にもジョン・ハント役出演しているケイシー・アフレックと二度(『セインツ』『ゴースト・ストーリー』)良作を形にしている実力者であり、彼こそ本作の実話を語る上で適任者だった。レッドフォードが、またシシー・スペイセクや盟友ケイシー・アフレックが見事な演技を披露する中で、デヴィッド・ロウリー自身もそれまでの経験から培った見事なストーリーテリングと温かな視点・眼差しで観客を誘ってくれる。軽やかなスリルと重くなりすぎないドラマの調和バランス。例えば冒頭から銀行強盗フォレストと刑事ハントの対をなすような関係性を然り気無く描き出す。フォレストの方が人生を、今を楽しんでいるのだ。しかしハントも『ルパン三世』における銭形のとっつぁんのようにフォレストを追いかけ始める事で、また彼を知っていくことで人生を楽しみ始めるように見える。そして奥さんが言うように二人には共通点も多いのだ。フォレスト=レッドフォードが語る人生観(「子供のときの自分が見て誇りに思えるか」)にはチクリと身につまされるものがありました。
(Can't remember where.) And he did. ...he was smiling. 最後の最後も彼は明日に向って撃ったーーー強盗で始まり強盗で終わるキャリア半生。日本ではサプライズ出演となった『アベンジャーズ/エンドゲーム』より公開が後になったけど去年から心待ちにしていた、レッドフォード役者引退ということで最後の主演作になる本作。邦題は役柄という以上にレッドフォードの長年に渡るキャリアへの賛辞・総括的意味合いが強くて、口にするのも恥ずかしいけど愛は感じられるかも。原題は『老人と銃』。まさしく名著『老人と海』も頭を過るような主人公フォレストのぶれずにある意味一本気な生き方(もっと肩張らずに気楽だけど)。Over-The-Hill Gang黄昏ギャングの仲間役ダニー・グローヴァー&トム・ウェイツもそれぞれに歴史があるので良かったです。本作と共通点も多いイーストウッド御大『運び屋 THE MULE』も良作だったけど、僕は本作派です。人生楽しんだ者勝ち!

GOOD LUCK ♪Lola by the Kinks
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