紅蓮亭血飛沫

劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディングの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

病気になる事もないそんな世界で、現実で難病に苦しむ人がその空間では健全な体を手に入れる事が出来、そんな世界で生きる事が出来たら・・・?
技術の発達と共に、目覚しい発展を遂げるVR(仮想現実)世界。
多くの新しい出会いと興奮に溢れるその空間に、人はどう向き合うべきなのか。

率直に言ってしまうと、本作は「結局のところ、VR世界に逃げるよりもちゃんと現実と向き合って乗り越えようぜ」という一文で完結しちゃってるんですよね。
レディ・プレイヤー1であったり、MOVIE大戦アルティメイタムであったり、この手の“仮想世界”を題材にする以上、“ちゃんと現実に目を向けて生きなきゃダメだよ”というメッセージから脱却出来ていない程に、まだまだVR技術自体が大衆に浸透していない、より深く掘り下げ・言及出来ていないのだと思います。
それこそこの現代においても、誰も彼もがVR技術を通したエンターテイメントにハマっているわけではないぐらい、我々一般人がその技術を体感出来る様になってまだまだ日が浅いですし、世に出たばかりの最新技術なのもあってどうしても必要経費・負担が他の娯楽よりも多く設定されていますし。
まだまだ大勢の人にVR技術の何たるかが広まっていない以上、大衆向けの映画という娯楽を通して描ける分かりやすい着地点が“仮想世界よりも現実に目を向けなきゃダメ”という、子どもに向かって「ゲームばっかりやってないんで勉強しなさい」と訴える事しかまだ出来ないんだと思います。
なので、本作で描かれる着地点は特に真新しさがあるわけでもなく、及第点だったりするわけです。

ですが、本作は仮面ライダーエグゼイドという“医療”をテーマとした作品です。
人の命を救う事を使命とするドクター達が、仮想世界で生きる事よりも現実で生きていく術を、支えを人々に提供していく・・・という信念がしっかりと一貫していたのは好感触。
難病を患う患者からすれば、こんな辛い思いをしてまで現実で茨の道を歩むぐらいなら、仮想世界で生きたほうがマシだよと思うかもしれません。
でも、その現実世界でしっかりとあなたを見てくれている人がいる。
あなたを支えようとする家族が、命を救おうと必死に戦うドクターがいる。
そう思うだけで、なんだか希望が湧いてくるじゃないですか。
自分の為に汗水垂らして戦ってくれる、医者という心強い人が現実にいてくれている、ヒーローがいるんだ、と。
だったら、そのヒーローに希望を託してこの現実世界で生きていくのも悪くないかもな、なんて。

先程も述べたように、この現代社会においてまだまだVR技術の発展と人々の認知度・浸透っぷりは発展途上です。
その為、“現実と向き合え”という有り触れたメッセージでしか、この手の作品においては結論を見出せていないジレンマがどうしても生まれてしまい、新しい切り口を開拓出来ていない事に肩を落としそうになる。
ですが本作は、“仮面ライダーエグゼイド”という作品だからこそ出来た、その有り触れたメッセージをより一層昇華させるための一工夫が光っていた、と感じられました。
VRという仮想空間で生きる事よりも、この現実世界で生きていく事はとても辛い。
それでも、自分の事を見てくれている、支えてくれるヒーローが現実にはいるんだ、という着地点が、エンディングでの澄み渡った青空を背景に走り出していくドクター・宝生永夢のシーンを通してしっかりと伝わってきました。

“平成ジェネレーションズFINAL”への布石をこのCパートの時点で設置する、という計算高い構成力にも脱帽ですね。
当時は通り魔だのなんだのと言われていましたが、まさかあのような目論見があったとは・・・。

エグゼイドという作品だからこそ出来る“ゲーム×医療”というテーマ、特殊空間での戦闘・エフェクト・カットインといった特徴等々、楽しく鑑賞出来ました。
個人的にエグゼイドでは仮面ライダーブレイブこと鏡飛彩がお気に入りなので、ゲムデウス相手に奮闘するも追い詰められるスナイプとレーザーを救出し「命を粗末にするな」「ゲムデウス・・・お前の存在はノーサンキューだ!!」と反撃に出る場面で心が躍りました。
炎吸収しながらの登場であったり、数多の剣を周囲に発現させたりと戦闘スタイル通してもかっこよさが際立っており、満足です。