日系ブラジル人のレオナルド・マツダが監督を務め、一人の男性の体の中でまったく異なる気質が対立する様子をコミカルに描く短編アニメーション。
日系の真面目さと勤勉さ、ラテン系の陽気さとノリの良さを表現しているので日系ブラジル人監督が作った作品というのは納得の内容。
人間の本質を突くストーリーで、理性と情熱がせめぎ合う身体の中の世界が描かれていておもしろい。「インサイドヘッド」でも使われた身体の中の世界を描いていた。
今の時代はまさに「アイデンティティ」の消失の時代と言える。無個性の時代に突入し、仕事にしても個人個人が代用品とする消費者として扱われている場合まである。淡々とパソコンをタイプする人たちに個性はあるのだろうか。
代替可能な個人を描き、本作品の職場の風景というのは、現代社会の縮図にも見える。個人を凌駕し、誰にもなれない1人の人間を目指せという近年のディズニーが提示する「アイデンティティの確立」と「自己実現」において励まされる内容に胸がざわついた。
たった6分の作品が「生き様」と「死に様」についても考えさせてくれた。