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羅生門のOのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.4

羅生門といえば老婆だったので、期待して観ていたのですが、全く出てきませんでした!残念(笑)

貴族の妻真砂といい、山賊多襄丸といい、情緒がジェットコースターでじわじわきてしまった。

今と違って表現方法に限りのあるこの時代だからこそ、役者さんの演技が少し大袈裟に見えてしまうんだろうな。

巫女さんの鬼気迫る口寄せのシーンは見ものでした。

本気で真砂を口説いて土下座する多襄丸に、易々と騙された自分を棚に上げて、簡単に身体許したと妻を売女呼ばわりする夫。

どちらも女を馬鹿にするような言動で胸糞悪いなあなんて思っていたら、真砂の狂った笑い声とそこから溢れ出すその本音に、思わず拍手をしてしまった。

男の情けなさ、女の強かさ。
男たちのつまらぬ見栄が招いた珍事件。
本人達は真剣そのもので必死なその様子に思わず笑わずにはいられませんでした。

大の男が揃いも揃ってへっぴり腰とはなんと滑稽なことか。お貴族様は置いておいて、あんなに大口を叩いていた多襄丸のあの有り様には少しがっかり。男も女も、ちょこっと残念に生まれてきてしまったよなあ。

“人の気持ちを考えていたらキリがない
手前勝手でない奴が生きていける世の中じゃない”
羅生門の下、地獄のような世の中に地獄のような現実がひとつ、またひとつ。
シニカルでエッジの効いた作品でした。
素晴らしかったです。
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