柊

羅生門の柊のレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.2
私は人の目の色が変わる瞬間というのを初めて見たように思う。やめてやめてと懇願する京マチ子の目が、途中から激しい怒りの色を湛えたように、私には見えた。それだけでこの映画を観た甲斐があったというもの。
黒澤作品は初鑑賞だったし、もはや歴史的な作品で娯楽としてはどうなのだろうと、半ば勉強のつもりで観たものの、圧倒された。泥臭く惨めったらしい斬り結び、下卑た笑い声、流れる汗、止まぬ雨音、梢から差す光、白黒なのになんと鮮やかなことだろうか。
観てよかった。
柊