ムーミーコロコロ

羅生門のムーミーコロコロのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.0
黒澤明恐るべし!深い!
少ない登場人物。場も少ない。なのに、どんどん訴えかけてくる。
多襄丸と真砂、武弘…。それぞれの証言は、全て自分が殺したと。自分を犯人にしてまで守りたかったものは…。プライド?自分の弱さを見せたくなかった?そんな小さな言い訳の中で、自分の理想像を話す。まさか、死人までがそんな事するとは思わなかった。
杣売りの話で真相がわかるものの、やはり杣売りも嘘をついていた。そこにも人間の弱さがあった。

下人の言葉もいちいち本当のことで、言い返せない部分がある。特にあの時代のように生きるか死ぬかのギリギリの社会では、人のことなんて考えていられない。でも、本当はそれも人の弱さなのかもしれない。


誰しもみんな心に弱さを持つが、それを認められずに隠そうとしてしまう。それが強がりであったり、見栄であったり、嘘であったりするのだろう。自分の弱さを受け入れられる者が一番楽に生きられるし、そういう人が本当に強くなれるのだろうと思う。

最後に杣売りが法師に言ったことは真実だろう。だからこそ法師は気持ちが楽になり、人をもう一度信じてみようと思えた。

散々人の弱さをさらけ出しておいて、最後に人の真心、真実をさらっと覗かせて終わるっていうところが、黒澤明監督の粋なところだと思った。この作品がいつまでも人の心に残る理由の一つじゃないかと思う。