二兵

羅生門の二兵のネタバレレビュー・内容・結末

羅生門(1950年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

芥川龍之介の原作(但し「羅生門」ではなく「藪の中」)を基に撮られた、『世界のクロサワ』を生み出すきっかけとなった一本。

学生時代、映画の原作とシナリオと本編を比較して論じるという授業があり、そのときに題材として講師が選んだのがこの作品だった。
そのため、一度原作と脚本を読んでストーリーを把握してからの鑑賞となったのだが…いやはや、これはすさまじい映画である。
全編のカットひとつひとつに凄く力がこもっているし、人間の本質をここまで描いた映画には、他にはなかなかお目にかかれないと言って良い。
ヒューマニズムをテーマに据えた作品であり、ある登場人物が言う「本当のことを言わねぇのが、人間だ」というセリフが実に深い。

役者的には、主演の三船敏郎が持つ泥臭さ、人間臭さは後の「七人の侍」にも通じるし、京マチ子の妖艶かつ鬼気迫る演技は、インパクトがある。



最も衝撃的だったのが、志村喬が赤ん坊を預かるあのラストカットであり、最初脚本を読んだ時は「救い」のある終わり方だと思ったが、改めて映像で見ると、むしろ志村の「自分がこどもを育てる」と言うのはウソではないか、志村はやっぱりあの後赤ん坊をどうにかしてしまうのではないかとも思ってしまった。そうするとラストシーンの彼のあの笑顔も、何やら含みがあるような気がして恐かった…。

とはいえ、自分がそう考えたということは、つまりこの映画が、鑑賞した時と場合によって様々な解釈が出来るということであり、従ってそれは、この映画がそれだけ「深い」映画の証であるということに他ならない、なんて思うわけでありました。
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