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羅生門のsonozyのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.0
芥川龍之介の短編 『藪の中』と『羅生門』をもとにした黒澤明監督の名作。
日本映画として初めてヴェネツィア国際映画祭グランプリとアカデミー名誉賞を受賞。

墨汁を混ぜた大量の水で豪雨に仕立てたという羅生門、殺人の起こった山、検非違使(けびいし)への証言を舞台に、名匠・宮川一夫撮影監督による強烈な光と影のモノクロ映像美が素晴らしい。

平安の乱世で起きた殺人事件をめぐって、侍を殺した盗賊、侍の妻、そして巫女を通じて侍の霊が、それぞれ事件について語るが、3人の言い分は食い違い、事件の全てを見ていたという杣(焚き木)売りの男が真実(らしき話)を語る。

土砂降りの朽ちた羅生門では、殺人事件と異なる3人の証言に悩む、杣売り(志村喬)、旅法師(千秋実)と、そこにやってきた下人(上田吉二郎)。
誰もかれも嘘ばかり、手前勝手だ!でも己の心も分からねぇ。。と嘆く杣売り。
人間の恐ろしさにくじけそうだが、人を信じようとする旅法師。
人間なんて訳わからんもんだ。手前勝手でなきゃ生きていけねぇ。とほざく下人。
3人の絶妙なキャラ設定で、人間の心の闇を描く。

事件が起こった山と検非違使への証言では、盗賊・多襄丸(三船敏郎)、侍(森雅之及び巫女)、侍の妻(京マチ子)。
過剰な演技(&ガハハ笑い)の三船敏郎の強そうで大したことなさそうなキャラが面白く、京マチ子の妖艶怪演が秀逸。
3人の言い分の食い違いから、人間のエゴイズムを描く。

そして、捨て置かれた赤ちゃん&志村喬&千秋実によるラストの希望。

NHKで放送された4Kデジタル修復版(日本語字幕付)で初見できて良かったです。
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