しん

サスペリアのしんのレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
4.5
怪作であり問題作であり、傑作。
君の名前で僕を呼んでが素晴らしく次作を期待していただけに、サスペリアを撮るとはまさか思ってもなかったがこれがまた異色の出来映え。
今作はアルジェント版とは一線を画す作品に仕上がっている。オリジナル版への敬意やインスピレーションは十二分に劇中に反映されているが、それ以上に自身の確固たる作家性を感じさせ、やはりこの監督は只者ではない。
この時代をあえて選んで物語の骨子にしている点からも、社会性、政治性を魔女と組織に置き換え比喩しており主題は明確、但し圧倒的に映像表現の魅力が勝る。
引きからのスピードあるクローズアップは恐怖を演出し、静止画と動画の連続カットは緊張感を煽り不穏な空気を劇場に招き入れる。
取り分け踊りのシーン。痛みと肉体の変容。二箇所のシーンがあるが、これがまた恐ろしく、目を背けたいが釘付けになる。
そしてラストの衝撃と救済よ。
ラストカットはホラーのそれでは全くないではないか。
個人的には150分の上映時間は長いとは感じなかった。
トムヨークが奏でる音の要素もマッチし見事としかいいようがない。
決して万人にお勧めは出来ない。普段映画を数多く観ている人にこそお勧めしたい。1人で全然観れる。頭をハンマーで殴られグラグラするような鑑賞後になるはず。
鑑賞中にわりと強めの地震があり、その恐怖と劇中の恐怖がリンクしたという貴重な体験をしたという事も追記したい。
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