konoesakuta

サスペリアのkonoesakutaのレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
4.6

大狂作だ。私から心よりの褒め言葉。オリジナルを観て脳みそパンクしてしまった方から順に本作を観てほしい。

オリジナルのウルトラハイパーな序盤、とんでもファッキンなエンディング。これらは本当に凄かった。いかれてたもん。あの映画のリメイクなんて無理だろ。なんでリメイクなんざしちゃうかな、どうせ大したことがないんだろ。…なんて人たちをかっちりあざ笑える本作は怪作。

本作を作ってるやつ頭おかしい。これ、最大の褒め言葉。キャリーやオーメンのリメイクなんざ鼻で笑っちゃうね。

世界狂気発見。スーパーヒトシくん頭がポン。

オリジナルの世界観を踏襲しつつもそれを乗り越える。命題ははっきりしている。しかしそれは安楽な道のりではない。

「どうせ安易なリメイク。恐怖シーンを垂れ流して急に大きな音を鳴らしたりもうストーリーも登場人物もどうでもいいじゃんよ。」
ってみんなも思ったりしなかった?古い、しかもあの、あのサスペリアのリメイクよ。唯一無二の恐怖映画。失敗しないわきゃないじゃん。リメイクなんてもんはオリジナルのカサ増し水増し切り貼り貼り。所詮そんなもん。

と思っていたらまさかの力技、渾身の一撃、くだらないことを極力廃して闇闇闇。今までに観たことのない大狂気の世界で観客のアゴを外していくわけだ。オリジナルの完成度は素晴らしい。正攻法ではリメイクした価値がない。他の手で行くしかないが。それを…、やってのけるとは。オリジナルとは違う手法で。

劇中逃げ出した女の子がいた。仲間の女の子が「彼女は決意が足りない」って言っていた。劇中のセリフだけどこれは演者たち全員に当てはまる。マジ。登場人物の大半の「この映画にかける決意」がハンパない。もういいなんというか、頭が下がる。
わからなくなりそうだな。スクリーンの中の彼女たちからは猛烈な気合いを感じる。スクリーンの外での彼女たちは本当の意味での「決意」を感じる。

この映画の役者陣を束ねた監督は相当切れ者に違いない。演者からのリスペクトを受けているに違いない。でなければあのラストシーンを撮ることは不可能。あのシーンはもう大凶。気持ち悪くて最高。

まあ本気で比べるのであればオリジナルの方に軍配は上がるって言いたいけど…、もうなんだか別の映画だもんね。歯切れ悪いけど…、やっぱりオリジナル観てからの方がいいよね。そうすればこのリメイクの良さを体感できるのでは。

猥雑で卑猥で生の女の性がふんだんに液体となって現れる。本作の映像には頭が下がる。いやらしい。情熱と格式が絡む女のプライドがぶつかる様がいい。あの前衛的なダンス1つ1つがいやらしい。クラシックダンスとは違う、熱量こそが命のダンス練習。ホールで練習する女たちの、運動する女の特徴ある汗の絡んだウッとなる匂いまでもが卑猥を感じさせられる。自分の全部を投げ打ってダンスに魂を売るあの感じ。本番当日までは見た目には気を使わずダンスに集中する。脇毛脇毛。

先生方もいやらしいこといやらしいこと。あー、とってもいやらしい。あー、下世話。

70年代っぽい感じバッチリ。何てったってタバコたばこタバコ。これがあの頃の時代をうまく表現している。だってどこでもタバコだもん。学校で授業しながら先生も生徒もタバコ吸っているようなもの。ライクアタバコ吸いながら方程式。

ゴブリンの音楽を越えるのにどうしたらいいのか。まさかのトムヨークで万々歳。あの浮遊感のある楽曲と歌声。はまっていたねえ。レディオヘッド最高。

本作のサスペンス感もよかった。オリジナルにもそういう要素はあったんだけど、本作はもっと謎解き的な雰囲気をまとう。しかもどんでん返し的なものまで。ストーリーだけでもいいものがある。それでね。すっごい尺が長い。何でこんなに長いんだろうって思ってたら。こりゃ長いのもうなずける。同じような場面をずーーっと、ずーーっと流してるとこちらもなんだか変な方に麻痺してきちゃって。なんだか変な空気感に引き込まれちゃって。 ギャグとかもずーーっと同じこと続けられたら変な感じにならない?音楽もずーーっと同じこと続けられたら変な感じにならない?あの感じ。あとで考えると冗長ではなくて無駄のない作品に感じるという匠の技。

サラかわいい。

サラかわいい。ちょっと探究心強すぎるけど。

最後の展開。起承転結の転結あたり。あまりの迫力に打ちのめされる。圧倒的な負のダンスが圧倒的すぎて。この場面にいるやつ全員頭がおかしいプロフェッショナル。これが小さなホールで行われるわけでしょう。誰にも逃げ道はないね。観ている私にも逃げ道はなかった。

思い出したのはキューブリック作品。

エピローグあって良かった。あのままダークどん底場面に落とされたまま劇場から放り出されたらと考えると本気で怖い。助かった。少しだけ現実に帰ってくることができた。蛇足なのかもしれないけど。


記憶をなくして生きていく。過去の辛い思いを引きずって生きていく。どっちがどれだけどうなんだい。よく嫌なことから学ぶことが多い、なんで言ってる人が多いがそれ本当かね。学ばなくてもいいから嫌なことに出会わなくてもいいんだけど。死ぬだけ。あとは死ぬだけの自分は嫌なことから解放されてもいいのではないかな。熱く語ってみた。

今の日本でこんな映画撮れないだろうなっと。誰も気合い入ってないし、「万引き家族」とか「7つの会議」とかそんなのが撮りたいんだろ。髪の色がピンクの男に恋させたりしたいんだろ。ちゃんちゃらオカシイぜ。ドラえもん映画の方がはるかにパンクだよ。内に溜まっているありとあらゆる液を全てスクリーン上にぶちまける映画が出てこないかなあ。予算ももらえないし役者も集まらないけど、それがやれたら必ず記憶に残る作品ができあがる。誰もコントロールできない暴発を監督1人だけコントロールする。それって正しい映画の作り方だよね。

エンドロールは最後まで。

この頃の普通の映画にはさらっと適当にレビューを書いてきた。本作は凄まじく最高の映画だったので思うがままにドロっと書いてみたよ。

最後までお付き合いいただきありがとう。
ベイビー、センキュー。