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サスペリアの2MOのレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
4.0
耳に纏わりつく声にならない声は、少女の“溜め息”か、ケモノの咆哮か。やがて断末魔の叫びと深紅の地獄絵図に血塗られるまでの、不穏に漂う音楽のような。神か悪魔を呼び出す呪文、あるいは“母”への祈りのような。

白のバレエシューズを脱ぎ捨て、裸足で踊る女たちの異様。暗黒舞踏なるその儀式的な舞いと息遣いと、陰影の深き魔術的なメディアは結託して、かつて“魔女”と呼ばれた異端、またはあらゆる迫害にさらされた魂の救済を描き上げる。抑圧と分断に繰り返される歴史の罪を、その悪夢的な恍惚の内に解放し、その恐怖から赦し、そしてエンドロールのその先に希望すらを映し得てしまうのだから──あの『サスペリア』からまさかこんな高尚な地平へと辿り着くなんて、ルカ・グァダニーノの豪腕にねじ伏せられる。
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