CANACO

彼女がその名を知らない鳥たちのCANACOのレビュー・感想・評価

3.4
恋愛なり結婚なり仕事なり、たいていの人間関係においては、相手に期待する「役割」があるはず。それが全くなく、「ただそこにいてくれればいい」となれば、それはもう愛と呼んでいいと思う。

そういう意味で愛を体現している男・陣治と、男に「ラグジュアリーなもてなし」を期待する女・十和子。加えて、女に「金」や「カラダ」を期待する男たちを交えた物語。白石和彌監督作品ということで鑑賞。

イケてる俳優をイヤな感じに悪く・怖く仕上げるのに長けた白石監督だが、本作も竹野内豊氏、松坂桃李氏が最高のクズ男に仕上がっていて感心する。蒼井優ちゃんも阿倍サダヲ氏もお芝居が上手すぎてのけぞる。

どこでそんなに汚れてくるのか謎なほど汚い陣治。個人的には、あそこまで汚く演出しないと、十和子が陣治を嫌うことに説得力をもたせられないからだと思う。
だって毎日小綺麗にしてくれたら一生そばにいるって言ったら、絶対その日からピカピカになるもんね?陣治は。

あんなに自分を許容してくれる人、アリ寄りのアリでこっちからプロポーズしかねない。十和子の姉が出てきて、陣治を褒めるシーンとか「姉さん!その通りです!」と言うしかない。
世の女たちもたいてい十和子と同様のことを男性に期待してるから、十和子が悪人だという意味ではなく。

十和子は男性にお姫様待遇を求めていたけど、ラストシーンを見たら、「絶対に取り返せないもの」について考えざるを得なかった。
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